発行元:株式会社医療経営
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今月のトピックス
サバイバル時代に突入する医療業界に勝つ

池田 宣康

今月の視点 :人工知能(AI)が進化しても変わらない個人の能力向上

皆さんはデール・カーネギーをご存知でしょうか?『人を動かす』『道は開ける』など彼の著作はロングセラーになっているので、書店で手に取られた方もいるでしょう。

先日、デール・カーネギーが開発したノウハウを元にしたトレーニングの一部を体験してきました。この体験講座では、自信の構築、コミュニケーションスキルの習得、人間関係の構築、ストレスのコントロール、リーダーシップスキルの習得を目指します。講座は座学ではなく、椅子だけ置かれた輪の中でテーマを与えられ、受講者が一人ずつ前に出て実際にやってみます。例えば「相手の記憶に残る自分の名前の伝え方」というテーマでは、単純なテーマではあるものの、いざ前に出てやってみるとなかなかうまくいきません。そこでトレーナーがさりげなく修正し、その場で効果的な方法を習得できるという、非常に実践的な内容でした。

今月の『キーマンに訊く』のインタビューでは、デール・カーネギー・トレーニング西日本の代表であり、トレーナーとしても活躍されている北郷氏にこのトレーニングの具体的な内容や効果について伺ってきました。日本ではまだあまり知られていないトレーニングですが、米国をはじめ世界各国で数多くの企業が導入しているとのことです。あのグーグルもこのトレーニングを導入していると聞いたら皆さんは驚かれるでしょうか?

グーグルといえば、言わずと知れた検索エンジンやクラウドコンピューティングなどのサービスを提供しているIT企業であり、人工知能(AI)を使っての音声入力なども開発している最先端企業です。

IT分野での技術革新やAIの進化により、現在人間が担っている業務は定型的なものを中心にそれらに取って替わられようとしています。そういった中で、なぜグーグルがあえてこの自己啓発ともいうべきトレーニングに億単位の費用をかけて社員に学ばせているのか、とても興味深く思いました。

北郷氏に伺ったところによると、グーグルがトレーニングの導入を決めたきっかけは、当初グーグルのトップの理念やビジョンを社員に伝える役割を与えられた役員が、このトレーニングを受けたことで明確に社員に伝えることができ、会社の成長に大きく貢献したことだったそうです。社員各々の能力向上を促し、その能力を最大限発揮してもらうことが自社の発展に寄与することに気づいたのでしょう。その後社員一人一人がトレーニングを受けることでスキルアップし、それが今のような世界的な大企業になる大きな要因となったようです。

ITやAIの進歩によって人が定型業務をより効率的にこなすようになり、人にしかできないクリエイティブな業務やコミュニケーションが必要な業務へとシフトしていく時代です。すでに茨城県庁では定型作業を代行・自動化するソフトウェア型ロボットRPA(Robotec Process Automation)を導入して一部業務の労働時間が80%以上も改善され、2019年度より本格導入するそうです。病医院においてもその流れは変わらないでしょう。

これから人が担っていくべき業務は何か。そこで必要となるスキルとは何か。自分の考えや意思を明確に伝える伝達力、リーダーシップ、そしてコミュニケーション力、自院のスタッフ一人一人がそういったスキルを身につけ、磨いていくよう促していくことこそ、将来に向けて今できる最善の投資ではないでしょうか。