発行元:株式会社医療経営
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今月のトピックス
サバイバル時代に突入する医療業界に勝つ

池田 宣康

今月の視点:親族に医師がいても、親族外への承継を検討しておくべき

今、中小企業の承継問題がクローズアップされています。団塊の世代の人たちが引退時期を迎える中、後継者が見つからず、業界では有名な中小企業であっても解散せざるを得ない事例もおきています。 病医院においても同じ状況です。承継者が決まっていない病医院が90%というデータもあるほどです。私自身、事業承継の難しさを現場で数多く目の当たりにしてきましたが、果たして承継をスムーズに遂行するためのポイントはあるのでしょうか?

まず最優先で考える事は親族への承継だと思います。子供が医学部に進学すれば是が非でも承継してもらいたいのが親心でしょう。しかし 昨今ではたとえ子供が医師になったとしても必ずしも承継するとは限りません。 孫の教育問題や配偶者の意向、研究に邁進したい、診療以外のことはしたくない、親子間での治療方針の違いなど様々な理由で承継しないケースは数多く存在します。

承継問題を先延ばしにし、院長がいざ病気などで承継を考えざるを得ない状況になってから慌てて後継者を探してもスムーズな承継は期待できません。 それを避けるためにはまず子供や親族に承継する意志があるのか、できるだけ早いうちに確認しておくことです。 子供の大学卒業時に承継の意志について明確に伝えておいても早くはないと考えます。よくあるのが「子供が継いでくれるのではないか」と院長が勝手に思い込んでいるケースです。いざ承継時期がきてから子供が自院を承継しないことが明らかになっては手遅れです。早いうちに院長の意志を明確に子供へ伝えることで、すぐに決断せずとも院長の考えが伝わり子供なりに考えます。 そうしておくことで手遅れになる前に結論がでるのではないでしょうか。

その一方で親族外の承継も検討しておくべきです。 結果として子供など親族へ承継できたとしても、早いうちから親族外への承継のための調査をしておくことは無駄ではありません。いざというとき慌てないための選択肢の1つとして経営者が打っておくべき手であると考えます。 つい10年ほど前まで、М&Aといえば乗っ取りというように、社会的にあまり良いイメージはありませんでした。しかし承継者不足が社会問題化してくるにつれ、経営者がМ&Aに対して抵抗感がなくなってきています。それに呼応するようにМ&Aを専門とする会社が増加しており、病医院の親族外承継を専門とする会社も現れています。 親族外承継を検討することは一昔よりハードルが低くなっています。

患者が減り、医療機器が老朽化し院長自身の体力が持たなくなってからでは買い手がつきません。 診療所においては近年の閉院数が年間約5000件となっています。 院長ご自身の代で終わることを決断した上での閉院であればよいのですが、承継に至らなかったために閉院せざるを得なかった事例も多く含まれていると推測します。

一般企業と違い病医院の承継は、原則医師に限られるがゆえに承継の難易度は高く時間もかかります。院長ご自身のライフプランもあるはずです。だからこそできるだけ早い時期に承継についての構想を練り、手を打っておくことでスムーズな承継を実行できるのではないでしょうか。