発行元:株式会社医療経営
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今月のトピックス
サバイバル時代に突入する医療業界に勝つ

池田 宣康

今月の視点:自院の評判を良くするための絶対条件

「自院の評判を良くするにはこれが絶対条件ですね!」と確信をもってお話しされたのが「看護師の採用・マネジメント実践法」と題してインタビューしたジョイン-ハンズ株式会社 輿石 光希(こしいし みゆき)代表から出た言葉です。

 

輿石代表は9月号でもご紹介したとおり、看護師として長年にわたり病院で看護師長などを経験された後、いまでは病医院向けに看護師の採用、マネジメントのコンサルティング、教育・研修、セミナーなど幅広く活躍されています。

 

引き続き10月号では、今春出版された「ナースのトリセツ」(木村情報技術書店)

(本のサイト:https://consunalist.jp/eshop/items/nurse01/)の内容から、経営者サイドの方にお伝えしたい「看護師採用面接のポイント」と「看護師のマネジメント術」について具体的なノウハウをうかがっています。

 

そのインタビュー後に「病医院の経営者の方が自院のことで一番気にしていることをご存じであれば教えてください」とお聞きしたときのことです。 輿石代表は「自院の評判が一番気にされていると思います」と答えられました。

 

では「自院の評判を良くするための条件は何でしょうか?」との質問に、それは「良い口コミです」と確信をもって答えられました。 自院の評価は外部から聞こえてくるもので、それは、院内の「口コミ」の結果だというのです。

 

患者だけでなく、そこで働く従業員、出入りする業者のかた等々、自院に関係するあらゆる人が、院内で見たもの、聞いたもの、体感したものを院外で親族、友人などに「口コミ」しているのです。しかも家庭内だけでなく、喫茶店、ファミリーレストラン、電車、バスなど公共のあらゆるところでも口コミしています。実際に、電車内で看護師と思われる方同士が職場の悩みを口にしているのを聞いた経験があると輿石代表は答えています。

 

とくに地域密着型かつ女性の多い職場である病医院は、他業界と比較して「口コミ」の影響力は大きいと言えるでしょう。しかも世代に関係なくインターネットでなんでも検索するようになり「口コミ」は瞬時に伝わるようになりました。

 

ただ「良い口コミ」が重要であるとは理解できても、意図的にコントロールすることはできるのでしょうか?

 

たとえば、グーグルマップで病医院を調べてみると「口コミ」に投稿している人のコメントを見ることができます。 そこには病医院側に落ち度がなくても少数ながら悪い口コミを意図的に投稿する人もおり、この口コミをコントロールすることはできません。

 

しかし、効果的な採用方法やマネジメントについてたくさんのノウハウをお聞きするうちに気づいたことは、これらのノウハウは「良い口コミ」を生む可能性を高める仕組み作りにつながっていることでした。

 

インタビューでお聞きした看護師募集をするときの効果的なノウハウの具体例を1つご紹介します。 それは、どのようなタイプの看護師に来てほしいのかを明確にし、看護師向けの言葉を使うことです。 たとえば、シングルマザーである看護師向けには「当院は家庭と両立して働ける場所です」、キャリアアップを目指す看護師には「自院ではあなたのキャリアアップを全面的にサポートします」など看護師の希望に合った告知をすると、実際に病医院側が求める看護師が応募してくるのだそうです。

 

このような募集方法をとると入職された看護師と病医院の希望がマッチし、双方の満足度が高くなります。 するとその看護師が友人の看護師から働いている職場の環境について聞かれた時「転職を考えているならうちの病院にくれば?」となる可能性は大いにありうるでしょう。

 

病医院側が、とにかく誰でもよいから看護師に来てほしいという場面があることは否めません。 しかしトラブルを起こす看護師が入職してしまい院内のコミュニティが悪化、留まってほしい看護師ほど辞めてしまうという問題は実際によく起きています。これが「悪い口コミ」を生み悪循環に陥る一つの大きな要因です。 こうなると募集を繰り返すようになり、病医院の利益を圧迫し続けることになります。

 

今後、診療報酬の大きな上昇が見込めない一方で、慢性的な人材不足による紹介会社へのコスト負担が大きくなることは避けられません。 これからの病医院経営は院内から「良い口コミ」が発生する仕組みをつくること、これこそが自院の評判を良くし、ひいては人材採用のコストを削減し収益を改善させる絶対条件であると感じました。