発行元:株式会社医療経営
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今月のトピックス
サバイバル時代に突入する医療業界に勝つ

池田 宣康

今月の視点:経営判断に不可欠な「俯瞰(ふかん)して見る技術」

「今月のキーマンに訊く」は、株式会社Healthe Oneの小柳社長とのインタビューでした。同社は、医師には診療に集中していただきたいとの思いから、医事業務の外注引受けやキャッシュレス決済システムなどの開発、販売など病医院向けにサービス提供を行っています。

 

コンビニエンスストアやスーパーなど小売店ではキャッシュレス化が進み、最近ではスイカ、ナナコ などの電子マネーの支払いもできるお店が増え利便性が良くなりました。 そこで今回のインタビューでは「病医院の会計にキャッシュレス決済は必要なのか」と題して病医院でキャッシュレスシステム化が必要なのか、導入のメリット、デメリットなどお聞きしました。

 

その小柳社長とのインタビューを通じて気付いたことがあります。それは目の前の事象だけで判断するのではなく、広い視点を持って全体を見渡し判断することの重要性についてです。

 

決済システムを導入するにあたりまず注目するのが、導入および導入後にかかるコストです。決済システム自体は利益を生みませんから、コストはデメリットです。 しかし導入することで間接的なメリットを享受できるかもしれません。

 

たとえば窓口収入の金額が合わないなど管理業務が職員の負担になっていないかということです。それが職員間や先生との不信感につながるなど、管理する職員のストレスとなっていれば、導入することで職員のストレスと業務の軽減となります。

 

また現金の持ち合わせがない患者の未収金がないかということです。もし未収金回収のために職員から患者宅への電話など非常にストレスのかかる業務を強いていれば、導入することで回収の手間と職員のストレスが解消でき大きなメリットとなるでしょう。また未収金をそのまま放置していないかという問題もあります。少額だからとうやむやにしていると、他の業務も杜撰な管理となりかねません。とくにお金に関係することはほんの些細な事でも放置しておくと、後々取返しのつかないトラブルに発展することにつながります。

 

このようにコストだけに注視するのではなく、広い視野を持つことで一見関係のない課題解決に結びつくことがあります。

もう1つの例として、人手不足の問題を取り上げてみます。ここ数年は募集広告を出しても応募がない、人材派遣会社に依頼しても紹介がないなど、人材不足が顕著になってきています。

 

この問題について、もう少し広い視点で考えてみましょう。人材不足に上手く対応している病医院はどのような取組みを行っているのか、外国人の採用はどうか、などです。さらに他業界にも視野を広めてみてはいかがでしょうか。社員が生き生きと長く働いている会社を見つけたらその理由など、調べてみる価値は大いになると考えます。

 

病医院内の人間関係に嫌気がさして辞めてしまう職員が多いのであれば、人間関係を良くする専門トレーニングを行ってもらう方法もあります。トレーニングによって職員の離職率低下につながるのであれば、職員採用に多額の費用をかけるよりよほどコスト削減となります。 実際、専門トレーナーにお願いして職員の離職率が劇的に改善し、さらに患者の良い評判を生み、売上が増えるなど、結果的にいくつものメリットを得ている病医院があります。

 

このように目の前の事象に囚われるのではなく、その事象をもっと広い視点で眺めてみるとこれまで気付かなかったことが見え、総合的な経営判断ができるようになります。では広い視点で眺めるにはどうすれば良いでしょうか。それは鳥のように上から「俯瞰して見る」ことです。これまで私がお会いしたすばらしい経営者の方は、俯瞰し全体を把握したうえで経営判断していることが多いと感じます。

 

経営上、重要な判断を求められる場面ほど、俯瞰する視点を持つことが経営者に必要な技術です。その技術を習得するには日頃から、目の前の事象に反射的に対処するのではなく、上から眺めてみる意識を持ってはいかがでしょうか。 これまで見えなかった新しい発見があるはずです。