発行元:株式会社医療経営
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今月のトピックス
サバイバル時代に突入する医療業界に勝つ

池田 宣康

今月の視点:社員が辞めない職場とは 

恭賀新年。本年もよろしくお願いいたします。

今年は平成最後、大きな節目の年となります。 世界経済を見渡すと、リーマンショックが起きた2008年以来順調に推移してきた米国株価が昨年秋口から乱高下を始め、10月に27年ぶりの高値を付けた日経平均株価も米国株価の影響を受け7年ぶりの下落で終えることとなりました。一番のリスク要因はハイテク覇権をめぐる米中の対立ですが、アメリカファーストを掲げるトランプ政権がこれまで公約をほぼ実現してきた背景から今回の問題も中国に対して後に引くことはないでしょう。米国、中国いずれにも輸出額の大きい日本への影響も大きいものとなることが予測されます。 今上天皇が即位された平成元年から日本のバブル崩壊の始まりとなりましたが、新しい元号となる今年、日本経済も新たな局面を迎えるのかもしれません。

さて、医療界にも関係する消費税が10月から10%へと引き上げられることが決定するなか、昨年度も全国の病床数は引き続き減少しており、病院経営の厳しさが浮き彫りとなっています。 一方で診療所の開業件数は増加が続いています。 特に東京都や神奈川県では新規開業件数が大幅に伸びており、競合医院の出現によって既存診療所の売上が減少しているという不安の声をあちこちで聞くようになりました。 これから院長先生方は、医師としての技術とともに経営者としての手腕も試される時代が本番を迎えるのかもしれません。

このような時は同業界での経営事例はもちろん参考になりますが、目から鱗のような大きな気づきはむしろ他業界から得られることが多いものです。そこで、今月の「キーマンに訊く」で医療業界とは全く無縁のトンネル設計会社の代表取締役にお話を伺ってきました。 20年近くお付き合いしている社長で、倒産の危機に直面する非常に厳しい状況から立て直し、安定した経営を続ける現在に至るまでの経営者としての姿を傍から拝見していました。 特に知りたかったのは、経営的に追い詰められていくような苦しい状況でもなぜ社員が離れていかなかったのか、またなぜ事業を投げ出さずに立て直すことができたのかでした。

医療現場でしばしば耳にするのは職員を募集しても応募がなくなってきたということです。 看護師の採用に苦労されていることは以前からよく耳にしていましたが、ここ1―2年は受付職員ですら採用に苦労している病医院があります。 これは一般企業でも同じ状況です。 今は、仕事があっても人手不足で仕事をこなせず倒産してしまう時代です。人の果たす役割が大きい病院や会社で職員が集まらないのは死活問題です。 そんな世の中をよそに、社員が辞めずにしかも前向きに働いてくれる会社を目の当たりにして、社長はどんなことを意識しているのか、いつかお聞きしたいと思っていました。 それは、入社希望者の面接、仕事の任せ方、家族的な組織形成まで社長がさりげなく行っていることがすべて結びついた結果でした。どんな厳しい環境でもやり方しだいで解決することができると気付かされたインタビューでした。