発行元:株式会社医療経営
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今月のトピックス
サバイバル時代に突入する医療業界に勝つ

池田 宣康

今月の視点:病医院でこれから重要性が増す「2つの経営資源」

企業経営に必要な資源と言われる「ヒト、モノ、カネ」は病医院においても欠かせません。医師をはじめ看護師、事務スタッフなどヒト、医療機器、資材などモノ、ヒトへの給与支払いやモノの購入などカネという資源がなければ運営はできません。

 

その経営資源について「開業3年で決まる! 成功するクリニック 失敗するクリニック」の第2回目として「経営資源から見たマネジメント対策」を株式会社A&Kメディコンサル.comの佐藤勝浩代表より詳しくお話をうかがうことができました。

 

佐藤代表は病医院の経営資源を、ヒト=生活圏に住む住民、患者、職員、そして院長の相談相手、モノ=建物、設備、カネ=事業計画、診療報酬の月次トレンドとして定義しています。

 

このなかで詳しく話されたのが経営資源のヒト、とくに院長の相談相手についてでした。診療所を開業すると病院内の人付き合いだけ考えていればよかった勤務医時代とは比べ物にならないほど多種多様なヒトと付き合うようになります。 それに加え、スタッフとの密なコミュニケーション、事務作業、院内の整備など診療以外の業務が格段に増え、判断に迷うことや分からないことが出てきて判断に窮することもでてきます。

 

そのためなんでも抱えこんで悩むより、信頼できる人物や専門家に相談することが早く解決できストレスを低減できる1つの方法です。 経営者は孤独であり経営責任を負う立場ですから相談相手がいることで悩みは大きく緩和されます。

 

そして佐藤代表はヒト、モノ、カネの3つの経営資源に加えて2つの経営資源を取り上げています。 それが「情報」と「信頼関係」で今後はこの2つの資源の重要性が増すと説明していただきました。

 

「情報」としては以下の5つを上げています。

①ホームページの充実

②医療施設検索サイトの上手な活用

③従来からある広告宣伝の活用方法とPRの考え方

④医療保険制度と診療報酬

⑤地域医師会への参加の有無

 

①、②は自院の情報を発信させるためのIT活用ですが、隣近所との付き合いが希薄と

なるなか、診療所は人の口コミよりネットによる情報収集で来院する割合が増えており、今後もその傾向は続くでしょう。

 

また情報収集力も非常に重要です。都市部に集中する診療所の偏在是正のための外来医療計画などはすでに議論されており、診療所も大きな変革の時期を迎えています。 診療報酬改定時の点数を気にするだけではなく、5年後、10年後の診療所のあり方を国はどのように考えているのか、常日頃から情報に触れて大きな流れをつかんでおくことで自院の方向性を正確かつ迅速に方向転換できる体制を整えておくことができます。

 

2つ目は、「信頼関係」で以下の4つを上げています。

 

➀ 地域住民との信頼関係

② 来院患者さんとの信頼関係

③ 職員との信頼関係

④ 診療サービスという事業を行っている信頼度

 

先ほど述べた通り人間関係が希薄しているいまこそ、診療圏の住民、患者、職員との信頼関係を築くことが非常に重要なファクターになってきます。

 

信頼関係が崩れると悪い噂が近隣だけでなく、ネット上で一気に広まる可能性が高い時代です。そしてネット上での情報はあきらかに虚偽であると判断されなければ消すことができません。

 

人はその時起きたできごとやタイミングで感情が動くだけに不確定要素が多く、不平や不満をゼロにすることはできないでしょう。しかし悪い口コミ、うわさよりも、良い口コミ、良いうわさをできる限り増やす努力はできるはずで、これが病医院の良い評判へとつながります。

 

年齢を問わずネット社会が浸透してきたからこそ、病医院経営は「情報」「信頼関係」を新たな経営資源と捉え生かしていくことが自院を長く繁栄させる重要な要素であると考えさせられたインタビューでした。