発行元:株式会社医療経営
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今月のトピックス
サバイバル時代に突入する医療業界に勝つ

池田 宣康

今月の視点:成功し続けるクリニックになるための「エリアマーケティング」

厚生労働が公表している全国の一般診療所数の推移によると、2014年にはじめて10万件を超えた診療所数はその後も増加、2019年の統計では102,616件、そして最新の統計の9月末時点では104,461件と増加傾向に変わりありません。

 

一方、同じく厚労省が公表している患者調査の概況をみると、推定患者数を人口10万人で割った、いわゆる受療率は、年齢階級別にみると65歳以上は減少傾向、64歳以下は横ばいが続いています。

 

この2つのデータを照らし合わせると、全国規模では供給側である診療所数が増加を続け、それに対し需要側である患者数は横ばいか減少傾向です。つまり、遠くない将来、需給バランスがくずれ患者数に対して診療所数が過剰となることが容易に推測でき、患者需要がまだ見込める地域やその地域に適した診療を提供することができるか否かによって、今後は成功するクリニックと撤退せざるを得ないクリニックに分かれていくと思われます。

 

そこで今月から3回シリーズで「開業3年で決まる! 成功するクリニック 失敗するクリニック」と題し、第1回目は「市場(マーケット)からの増患・集患対策」について株式会社A&Kメディコンサル.comの佐藤勝浩代表にお話をうかがいました。

 

これから開業される先生にとっても、またすでに開業されている先生にとっても、開業地域の需給バランスを調査分析し、必要な対応策がとれる環境を整えておく「エリアマーケティング」手法が不可欠な時代となっています。

 

そこで佐藤代表とのインタビューでは、「エリアマーケティング」の調査分析をおこなうための5つの市場性について次の通り取りまとめていただきました。

 

(1)市場規模:診療科目ごとでの患者数の発生状況及び潜在需要の把握

・開業時➡年齢別人口や疾病別推計患者数など需要把握

・開業後➡診療機能の提供の見直し、PR及びアピール戦略の内容を再考

 

(2)市場範囲:診療圏となる診療守備範囲を把握

・開業時➡診療圏となる診療守備範囲を想定して市場規模を確認

・開業後➡実際の来院患者から診療守備範囲の修正及び広報戦略等の適正化

 

(3)市場ニーズ:患者の思考や患者の欲求を知る

・開業時➡提供できる診療機能とマッチングを検討

・開業後➡ニーズや評判を把握しながら、できる診療機能の提供を付加

 

(4)市場トレンド:時系列で生活圏及び診療圏など傾向を把握していく

・開業時➡開業立地の過去から将来における地域開発状況の要素を入れる

・開業後➡来院患者の状況を時系列で把握し、診療機能の提供やPR戦略を

うちマンネリ化を防止する

 

(5)市場バランス:医療需給状況(供給:医療機関/需要:患者)を把握する

・開業時➡新規開業の合否判定の1つの根拠となる

・開業後➡診療提供体制の拡充及び縮小の検討材料

新たな診療科目の追加や機器導入などの検討材料

分院などの新たな展開への検討材料

 

これから開業を検討される先生は5つの市場性を1つ1つ調査分析することで

開業予定地の成功確率が把握でき、適切な地域であれば、先生は自信をもって開業することができるでしょう。 一方すでに開業されている先生にとっても、自院の周辺地域の変化を肌で感じるだけでなく定期的に分析する数値を見ることで新たな発見や気づきを得られ、必要に応じて対策を講じる貴重な情報となります。

 

需給バランスが崩れつつある今、一昔前までのように開業地域の医療需給バランスを調べることなく開業しても成功する確率は低下しています。 またすでに開業しているクリニックでも患者減少の理由をつかめないまま歯止めがかからないという問題を抱えている先生もいます。

 

「エリアマーケティング」を実施することでこれまで気づかなかった発見がいくつも見つけられるため効果は絶大です。 ただ何となくわかっているのではなく、明確な数字を出してこそ自院を常に改善し続けることができます。 そしてこの努力を継続していくことが成功し続けるクリニックの条件になると感じたインタビューでした。