発行元:株式会社医療経営
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今月のトピックス
サバイバル時代に突入する医療業界に勝つ

池田 宣康

今月の視点:悩める母子をサポートする「訪問看護ステーション」の存在

令和3年10月13日の在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループの調査によると、令和1年まで訪問看護の利用者数は右肩上がりに増加していることがわかります。同時に訪問看護ステーション数も令和2年度の医療保険での訪問看護事業所数は11,000件まで増えています。

 

団塊世代が75歳以上となる2025年を目途に、できる限り住み慣れた地域で暮らし続けることができよう地域包括ケアシステムのもと、施設から在宅への流れはこれから続いていきます。75歳以上の人口は総務省統計局の高齢者推移データによると2040年まで2200―2300万人であり減少傾向はみられないことからも訪問看護の需要はまだ伸びていくでしょう。

 

このように訪問看護ステーションといえば高齢者向けサービスと認識していましたが、先日、高齢者ではなくもっと若い、出産、子育て世代を対象とした訪問看護を運営されている方の紹介を受け、事業内容をお聞きしたところ、とても興味深い内容でした。

 

そこで今月の「キーマンに訊く」では「精神疾患、発達障害、難病を抱える母子をサポートする訪問看護ステーションが目指すもの」と題し渡辺代表に、サービスの仕組み、看護事例などうかがいました。

 

医療保険を利用できるとのことで、あらためて訪問看護制度を調べてみました。

すると、平成3年10月に老人保健法の改正により老人訪問看護制度が創設され、平成4年4月1日から在宅の寝たきりの老人等に、老人訪問看護ステーションから訪問看護が実施されています。

 

そして、平成6年10月1日には健康保険法の改正により、老人医療の対象外の在宅の難病児者、障害児者などの療養者に対しても訪問看護が実施され、訪問看護サービスは、すべての年齢の在宅療養者に訪問看護が提供できるようになっていました。

 

インタビューのなかで、うつ病を既往症にもつ女性の出産、発達障害の女性の育児ストレスのなどの看護事例がでてきますが、このような方が訪問看護を利用できると初めて聞く話は驚きでした。と同時にこのようなサービスの存在を知らない方が大勢いるではないかと感じました。

 

最近でも小さな子供に対する虐待が取りざたされるニュースがしばしば目に留まります。このような痛ましいニュースで感じることは子供と同時に母親も社会的孤立のなかで、精神的な苦痛からこのような事件を引き起こしてしまうほど追い詰められてしまっているのではないかと思われることです。

 

とくにコロナ禍で母親同士の交流や自治体の集まりなどが中止になっていたとすると、引きこもりと同じような境遇の母子家庭がさらに増えている可能性があります。

 

少子高齢化に歯止めがかかる要素は今のところありません。そして増え続ける高齢者の方への社会保障は必ず必要です。しかしこの逆ピラミッド型になってしまった人口構成は、若い世代へ大きな負担を強いる結果となっています。そのような日本の未来をまた活気のある良き時代に戻すには、これから社会をさせていく子供を大人が守っていくことが必須であることは間違いありません。

 

あらためて、若い世代で事例のように苦しんでいる母子が訪問看護サービスを受けられると知っている方はまだまだ少ないと思います。情報発信をぜひ続け、少しでも多くの方に認知してもらう必要性を痛感したインタビューでした。