発行元:株式会社医療経営
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今月のトピックス
サバイバル時代に突入する医療業界に勝つ

池田 宣康

今月の視点:ピンチをチャンスに変える思考とは?

つい数ヶ月前まで予想もしなった新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るい、日常生活ばかりでなく経済的にも大きな影響を及ぼしています。 ご存知の通り日本では4月から非常事態が宣言され、飲食業、宿泊業をはじめとしてほぼ全ての業界で経済活動がストップしています。 医療業界も今回ばかりは例外ではなく、来院患者の受診抑制から多くのクリニックや病院が収益減となる、これまで経験したことのない経営環境の悪化が懸念され不安を抱えている院長先生も多いとお察しいたします。

コロナウイルスがいつ収束し日常の診療に戻れるのか、現時点では先行きが見通せず厳しい状況ではありますが、ただじっとしているわけにもいきません。 そこで今こそどのような対応をしておけばよいのか「新型コロナウイルスというピンチをチャンスに変える、クリニック経営対策」と題して株式会社ドクター総合支援センターの代表取締役である近藤 隆二さんにお話をうかがいました。

クリニックの先生にとって一番の不安は、自院を支えてくれている患者さんが戻ってきてくれるのか、またいつ戻ってきてくれるのかですが、現時点で明確な見通しがつかないなか、収益減による資金繰りは日々悪化します。インタビューで近藤氏もまず手を付けるべきは資金繰り対策であると述べています。万が一、資金不足に陥れば自院が存続できなくなります。 人は誰でも資金繰りに問題を抱えると的確な判断が難しくなりますので、そのような状況に陥らないためにも資金確保が喫緊の課題となります。できるだけ早く銀行へ融資の相談をすることや、昨年同月比5%以上、15%以上、20%以上の売上減でそれぞれ活用できる「新型コロナウイルス感染症対策特別資金」を早く申請しておくことをお薦め致します。またコロナウイルス第2波や受診抑制の長期化などを想定し、資金的に余裕のある先生でも、今のうちに融資を受けておいてよいかもしれません。

そのうえで近藤氏は、診療も儘ならないこの時期だからこそコミュニティ、マーケティング、チームを整える良い機会であると主張しています。 コミュニティとは、自院を受診する可能性のある人々、あるいは受診する可能性のある人々を連れてきてくれる人や組織のこと、マーケティングとは、コミュニティの方々が自院を選んでいただくために必要な情報をわかりやすく伝え続けるということ、そして チームとは、自院を運営するスタッフおよび自院の経営を支えていただける企業の方々や専門家の方々など自院の周りで支えていただける方々であると近藤氏は定義しています。

この定義をもとに、たとえばコミュニティに対しマーケティングすることを考えてみると、遠隔診療や電話診療の採用や自院のコロナ対策への取組みなどされていれば、これまで来院した患者さんに対してウェブサイトやハガキによる情報発信、電話してきた患者さんに対しても分かりやすい案内などして情報提供を積極的に行うことで、患者さんが戻ってきやすくなる効果は大きいと考えます。

またチームについては、院長先生、看護師や事務スタッフ、そして協力していただける専門家と連携の取り方や同じ事務処理の繰り返しなどに課題があれば、この機会に仕組み作りをすることで生産性が向上し、患者さんが戻ってきたとき、より一層患者さんと向き合える時間を確保できるのではないでしょうか。

このような苦難のなかですが、ピンチをチャンスに変える前向きな思考をもって診療以外のことに手を打つことができると捉えれば、今だからこそやるべきことが見えてきますし、またこれまで忙しくできなかった改善やさまざまなアイデアを実行することもできます。

外的環境に抗うことはできずいつ患者さんが戻ってきてくれるのか分かりません。しかし院内体制を再構築し準備を整えておけば、患者さんが戻ってきたときに良いスタートがきれます。 不安を抱えながらの診療になると思いますが、どんな苦しい状況に追い込まれても打つ手は無限にあります。 地域の患者さんが戻ってくると信じ、ぜひこの困難を乗り切っていただくことを願っております。