発行元:株式会社医療経営
TEL

今月のトピックス
サバイバル時代に突入する医療業界に勝つ

池田 宣康

今月の視点:デール・カーネギー・トレーニングはなぜ病医院でも驚くほど効果が高いのか?

今も昔もコミュニケーション能力の向上や人間関係の強化を図るさまざまなセミナーが開催されています。 しかしこのようなセミナーはあいまいで具体的な成果が見えず、あくまで個人のパーソナリティに委ねられるものと考えている先生は少なくないのではないでしょうか。 また、そのようなセミナーを受講させても短期的な効果しかなく、自院の実益につながる定量的な効果が測れないと考える先生もおられるでしょう。

 

私自身もこれまで業務をおこなうなかで「人の話を聞かない」「言ったことしかやらない」など感じる場面はありましたが、どうすれば改善できるのか悩みはあっても解決策を見出すことはできませんでした。

ところが今回の「今月のキーマンに訊く」でこのトレーニングを導入しているクリニックの院長先生、事務長、介護施設の責任者の方と導入の経緯や導入前後で素晴らしい変化を遂げたことをお聞きすることができました。 たとえば「これまで非協力的な職員が自ら協力してくれるようになった。」「紹介会社に依頼せず優秀な人材を獲得できた。」「患者からの良い評判が生まれ患者が増えた。」などの結果です。

 

これまで私は、先生と職員、職員同士、職員と患者とのコミュニケーションなど人の問題で悩んでいる病医院の院長先生を多く目の当たりにしてきました。 しかし何か対策を講じ改善した、または対策して根本的に改善できたという話はこれまでほとんど聞いたことがありませんでした。 「たまたま良い人材が入職したので助かった」という偶然に頼った話を聞いたことくらいです。

 

それを今回、トレーナーであり代表である北郷氏からもこのトレーニングの根幹についてお聞きすることができました。驚いたのは100年以上積み上げてきた具体的で効果の高いロジックが存在していたことです。

1)コミュニケーション技能 2)人間関係強化 3)自信の構築 4)ストレス・悩みの管理5)リーダーシップ技能を「5つのドライバー」と呼び、各項目を体系的に学びトレーニングを通じて習得していくのです。

 

インタビューで話されているように、職員はみな参加するまではかなり後ろ向きだったようですが、いざ継続的にトレーニングを繰りかえすと、現場でしだいに「人が動いてくれる」「人の協力が得られる」といった目に見える効果が表れ、いまでは、職員一人一人が身に着けたことを現場で積極的に活用しているそうです。

 

これまでのコミュニケーション学習の問題点は、2つあると考えられます。1つはコミュニケーションの本質まで伝えるトレーニング体制が確立されていないことです。挨拶の仕方や言葉使いなど表面的なことを学ぶだけでは根本的な解決にはならないでしょう。2つめは、座学だけでは身につかないことです。スポーツと同じで、せっかくの良い教材もただ学ぶだけでは実践で使えるようにはなりません。水泳、ゴルフ、野球、サッカー、どんなスポーツでも学んだことを実際に反復練習することで身体が憶えていくのはご理解いただけると思います。

 

デール・カーネギー・トレーニングの特徴は、参加者が「喜んで人に動いてもらう」ための考え方を体系的に学べ、理論的に理解できることです。またトレーナーのサポートのもと反復してトレーニングできるプログラムであるため、現場で実践しそれが習慣化されるまで何度でも練習できることです。

 

世界中でこのトレーニングは開催されており、現時点で卒業生は1000万人を超えているそうです。日本でも成功をおさめている大手企業の著名な経営者ばかりでなく、社長以下全社員がトレーニングに参加し自社の成長に大きく貢献している事例をいくつも聞くことができました。

 

病医院経営は人材が最も貴重な資源であり、自院の繁栄は人材に左右されると言っても過言ではありません。とくにコロナ禍で病医院の職員が患者対応やいわれのない誹謗中傷により疲弊しているニュースを頻繁にみかけるようになりました。このトレーニングを取り入れることで、ストレス・マネジメント、職員同士の良好な関係、業務の効率化、患者からの良い評判、周辺施設との良好な連携など、あらゆる場面に好結果をもたらす成功への近道であると感じたインタビューでした。