発行元:株式会社医療経営
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今月のトピックス
サバイバル時代に突入する医療業界に勝つ

池田 宣康

今月の視点:コロナ禍で再認識した「自己投資」がなぜ必須なのか?

2020年を迎え日本ではオリンピックが約55年ぶりに開催され好景気に沸くことを誰もが期待していましたが、世界中で蔓延した新型コロナウイルスの影響で瞬く間に医療崩壊の危機、経済活動のストップ、金融市場の混乱などこれまで経験したことのない困難に直面する事態となりました。そして地域医療を支える病院、クリニックの経営にも減収という多大なダメージを被る誰もが予想しえなかったことが起こっています。 非常事態宣言の解除とともに患者は戻りつつあると思いますが、いつ第2波が襲ってくるかもしれず、新型コロナの悪影響はまだ継続中といえます。

 

経済活動の停止により企業への資金繰りは悪化し、その対策として国は国民一人当たり10万円の特別手当給付金を始め、企業や個人事業主向けには事業化給付金、雇用調整助成金、家賃支援給付金など矢継ぎ早に資金的な支援を打ち出しましたが、今ほど余裕資金の必要性を感じた先生方は多いのではないでしょうか。

 

資金を確保するために制度の活用や融資を受けることが先決ですが、個人においても法人においても普段から資産を効率よく増やすために預貯金だけでなく、お金に働いてもらう投資運用が必要であること(医療法人では定款によって一定の制約がありますが)を考えるきっかけでもあります。

 

しかしこのような非常事態による金融市場の混乱が資産の目減りにつながる可能性が高くなることも事実です。そんな折、今年1月号の「キーマンに訊く」に登場いただいた専業投資家である天間友弘さんが発信する情報から、金融市場の乱高下に臆することなく普段通り投資を実践されていることを目の当たりにし、なぜそのような心構えでいられるのか、また資産に影響はなかったのか、今後どのようなことを考えて投資していくべきか、などあらためて7月号の「キーマンに訊く」でお聴きしました。

 

「投資」という言葉は金融業界でよく使われ、将来的に資産を増加させるために現在の資産を投じる活動することと定義されますが、広義では自己の研鑽、つまり「自己投資」という言葉でも使われます。 今回のインタビューでは金融に関する話に終始していますが、話の節々に感じたことは資産を増やすために膨大な情報収集や勉強から得た知識を実践し、それを繰り返す天間さんの飽くなき探求心であり、それはつまり資産を護りそして増やすための「自己投資」を怠らないという事でした。

 

投資とは不確実性、つまりリスクが必ずつきまとうものですが、「自己投資」はもっともリスクが少なく大きなリターンを期待できるものです。 たとえば財務会計、マーケティング、コミュニケーション術、事務の合理化など、自院の発展につながる勉強、セミナーなどに投資したリターンは先生の頭の中にノウハウとして残ります。 そして今後のさまざまな状況に応じていつでも引き出せることができます。

 

今回の新型コロナの影響により収入が2割減であれば良い方で4-5割減の病医院も多数あったと言われています。 そんななか、患者のため、家族のため、スタッフのため、そして自分のためにも自院を存続させる気持ちは大きいはずです。しかしただ手をこまねいていても問題が解決するわけではありませんし、誰も明確な回答を持ち合わせているわけではありません。 そんな苦境のなか、何を考え実践すればよいのかは普段から「自己投資」しておくことで解決への糸口が必ず見つかります。

 

新型コロナによって生活環境ばかりでなく経済環境もこれまで通りに戻らないという風潮です。患者の受診抑制も一時的なものではないと考えておいた方がよいでしょう。すると病医院間同士の競合はこれから一層激しくなります。 院長先生の診療技術と人柄が最も重要な資源であり、それだけで乗り切れる病医院もあると思いますが、さらに経営を盤石なものとするためには「自己投資」を行うことが最も効率の良い投資となります。 そのために診療の範疇にとどまることなく興味の幅を広げ継続的に「自己投資」を行うことが自院に長い繁栄につながることに必須であると考えます。