発行元:株式会社医療経営
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今月のトピックス
サバイバル時代に突入する医療業界に勝つ

池田 宣康

今月の視点:クリニックの現場動向から考える、3つのトピックス

2020年春から夏にかけて新型コロナウイルスの影響から来院患者数が激減しこの先どうなるのかまったく先が見えないと心配された院長先生も多かったと思います。 そしてオリンピック開催前後から再び感染拡大が報告されコロナウイルス収束の時期が読めない状況です。

 

それでも以前より患者は戻ってきており新規開業される先生もいます。 そのような状況下、現場ではどのような動向がみられたのか? 2019年6月にご登壇いただいたMedファイン代表 井上 歩弥代表に「院外事務長からみた今の現場動向」 ~現場で起きているよもやま話~ と題して、クリニックの現場でいま起こっていることにについて、クラウド型電子カルテ、オンラインの活用、現金取扱い問題をトピックスとして取り上げお話を伺いました。

 

1つ目のクラウド型電子カルテについては、井上代表によると、新規開業する最近の先生は電子カルテを選ぶ際、必ずクラウド型が選択肢に入っており、実際に導入する先生は増えているとのことです。とくに、在宅診療のクリニックにとっては利便性が良く導入の割合は高いようです。

 

オンプレミス型と比較した場合のメリット・デメリットのいくつかを列挙しました。

 

1.低料金で導入および運用ができる

2.ネット環境があればどこからでもアクセスできる

3.アップデートやバックアップなどの手間がない

4.サーバーを置くスペースが不要

5.Windowsしか利用できない(OSに制限)場合がある

 

このように魅力的なメリットはいくつもありますが、一番の懸念はデータセキュリティについてではないかと思われます。確かに、データ漏洩が起きれば自院のダメージは計り知れません。しかしウェブ環境は日々進化し多くの事業者がクラウド型電子カルテ販売に参入していることから厳しいセキュリティ機能が働いているでしょう。

 

ICT化の流れを考えると、いずれはクラウド型電子カルテが主流になっていくと予測されますので、オンプレミス型を利用している先生も、経費削減と作業効率アップを実現できるクラウド型電子カルテの性能やセキュリティリスク、現場で利用している先生の声などいくつかのメーカーに問い合わせ情報収集されておく価値があると思われます。

 

2つ目は、オンラインの活用についてです。新型コロナウイルスをきっかけに在宅勤務が増えた会社ではオンライン会議や打ち合わせなど頻繁に行われるようになりました。 一方でクリニックは患者を直接診療するため、オンラインの利用はあまり進んでいないようですが、井上代表は先生からの依頼でレセプトチェックをオンラインで行う機会が増えたようです。訪問することなくこの作業ができることは、クリニックに訪問することなく先生の管理のもと、チェック作業ができる自由さやコロナ感染のリスク面を考えても非常に効率の高い作業であると感じました。

 

3つ目の現金取扱いの面では、それまで病院への見舞いついでに支払っていた親族がコロナ禍で来院できなくなり、支払いが滞る問題が起きているとのことです。クレジットカード決済や引き落とし手続きなどが難しい高齢者の方も多く、回収業務が課題になっているようです。

 

また、クリニックでは現金両替の問題が浮き彫りとなっていました。銀行まで両替に行く手間、銀行店舗の統廃合が進み利便性が悪くなる、そして両替手数料が上昇していることです。また釣銭の間違い防止やスタッフの業務軽減など、自動精算機の導入はメリットが高いと感じていましたが、自動精算機も現金を入れておかなければならず、結局は同じ問題が発生するようです。 デメリットはいくつかありますが、それでもキャッシュレスで決済できる手段を考える時期に来ているようです。

 

これら3つのトピックスについて、明確な解決方法が見いだせていないものもありますが、地域連携が進むなかで診療以外の事務作業は今後も増え続けるでしょう。

 

1つ1つの課題は大きくなくても、放置しておくとそのうち収拾がつかない恐れもでてきます。 常日頃から自院の課題を先生とスタッフが共有して解決策を考えていく必要があると痛感したインタビューでした。