発行元:株式会社医療経営
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今月のトピックス
サバイバル時代に突入する医療業界に勝つ

池田 宣康

今月の視点:これから経営に不可欠な「インテリジェンス」とは

今月は、社会保険診療報酬支払基金を退職され、現在会計事務所で診療報酬のコンサルティングを行っている加藤登氏へのインタビューでした。 私自身、新規開業した院長先生から新規個別指導について数多くの問い合わせをいただいていましたので、支払基金の業務内容や地方厚生局との関係、また指導へ移行するしくみなど普段では知りえないことを訊く良い機会になりました。新規開業した先生に話を伺うと、開業の約1年後に新規個別指導があることはもちろん知ってはいるものの、どのような指摘を受けるのかなど分からないため不安を感じていることが窺えます。

確かに、厚生局の担当者によっては厳しい追及を受けることが全くないとは言い切れません。しかし今回のインタビューで解ったことは、規則に従った請求を行っていれば執拗な追及などはまずないだろうということでした。 つまり支払基金から厚生局へ通知する仕組みや、個別指導に移るポイントなど知っていれば不必要な不安を抱えることなく事前に対策を立てることができます。

ところで不安とは漠然とした対象に抱く感情であり、恐怖は明確な対象への恐れです。例えば、厚生局が何をしてくるのか分からないから不安が起きるのですが、突然、個別指導の通知が来たらこれは恐怖へと変わります。不安な状況では、まだ冷静に考え対処することもできますが、恐怖に陥ると冷静な判断や適切な対処を行うことが困難となります。このような事を回避するためには、普段からできるだけ正確で詳細な情報を入手しておくことです。情報収集力は病医院を経営するにあたり極めて重要な能力になります。

2018年3月号の「今月の視点」でも述べていますが、受け身で入ってくる情報だけで判断すると情報操作される可能性があり危険です。そしてそれはただの「インフォメーション」=情報データでしかありません。 これから求められるのは、意図して能動的に情報を取りに行く姿勢です。 自ら情報を掴むことで「インフォメーション」だったものが「インテリジェンス」に変化していきます。

「インテリジェンス」とは情報という意味ともう1つ「知性、理解力」という意味もあります。能動的に情報を取得することで、それを自分なりに理解し判断する力が身につきます。

厚労省では医師需給分科会にて診療科ごとの将来必要な医師数の見通しを医師偏在指標によって示しており、この指標をもとに診療所の地域偏在も指摘されています。 偏在地域における新規開業への対応が協議されていますが、今後はすでに開業している診療所の承継問題と併せて検討が為される可能性もあります。すでに病院間や診療所間での競合が多く需給バランスが崩れ患者の奪い合いが表面化している地域がいくつも出てきています。病床数の減少が止まらない状況で病院勤務医の行き先が少なくなると、さらに新規開業による地域の競合が激しくなることも推測されます。

少子高齢化が本格的に到来した今、20年前と比較的して医療業界の変革スピードは加速しています。 他院より早く情報を入手し「インテリジェンス」をもって対応する能力が自院の勝ち残りに不可欠になる日がすでに到来しているといっても過言ではありません。