発行元:株式会社医療経営
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今月のトピックス
サバイバル時代に突入する医療業界に勝つ

池田 宣康

今月の視点:かかりつけ医機能と医療機関での対応

日本におけるかかりつけ医機能報告制度ができた背景には、高齢化社会の進展や生活習慣病の増加、医療技術の進歩などにより、患者一人ひとりの医療ニーズが多様化していること、そしてこれらの変化に対応するために、効率的で質の高い医療を提供することが求められています。

 

この制度の目的は、患者がかかりつけ医による継続的な診療を受けることを奨励し、患者の健康管理と医療の質の向上を図ることです。また、患者の健康状態や医療履歴を把握しやすくなり、より適切な医療提供が可能になります。

 

さらに患者が不必要に多くの医療機関を受診することを防ぎ、医療リソースの有効活用に寄与することができることから、医療費の増加を抑制する効果も期待されています。

 

かかりつけ医の機能については「医療提供体制のあり方」日本医師会・四病院団体協議会合同提言(2013年8月8日)において定められています。 要約すると、地域の医師、医療機関等との連携、夜間・休日にも対応できる体制、地域住民との信頼関係を構築などとなっており、ゲートキーパーとしての役割を担うことになります。

 

しかし、令和2年受療行動調査の概況によれば外来患者が、受診した病気や症状について最初に受診した場所をみると、「最初から今日来院した病院を受診」が53.3%と最も多く、「最初は診療所・クリニック・医院を受診」は18.0%に留まっています。 また最初の受診場所が平成26年、29年、令和2年でみると病院が57.6%→53.9%→53.3%、クリニックが13.3% →15.4%→18%となっており、外来医療の分化が進んでいない状況です。

 

このことからも医療機能情報提供制度が国民に向けてさらに情報提供の充実・強化を図るために令和6年4月に刷新され、令和7年4月には、かかりつけ医機能報告の創設と患者に対する説明について施行されることになっています。

 

今後、外来医療の促進が図られ診療報酬にも反映されていくことから、医療機関の経営に活かすために、次の視点がポイントになると考えらます。

 

1.患者の継続性と信頼関係の構築: かかりつけ医として患者と長期的な関係を築くことができれば、クリニックの安定した収入源となりえる。

 

2.専門性とサービスの質: かかりつけ医としての専門性や高いサービスを提供できれば、患者の満足度が高まり、口コミによる新規患者の獲得につながる。

 

3.連携とネットワーク: 地域の他の医療機関や専門医との連携を強化することで、患者への包括的な医療サービスを提供でき、クリニックの評価を高めることができる。

 

とくに患者との信頼関係の構築が最も重要であり、その裏付けとして、サービスの質、連携ネットワークを日々積み上げておくことが患者から選ばれる医療機関としての近道と思われます。

 

それは、日医総研のワーキングペーパー、「日本の医療に関する意識調査2022年臨時中間調査」にある国民が抱く、かかりつけ医に対するイメージの自由記述で「相談しやすい・話しやすい」「信頼している」「安心」が非常に高い割合となっていることからも国民が最も期待する、かかりつけ医像と言えます。