発行元:株式会社医療経営
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今月のトピックス
サバイバル時代に突入する医療業界に勝つ

池田 宣康

今月の視点:「働き方改革」で病院の売り上げを伸ばす戦略

「大病院の院長が自ら当セミナーに出席することもあります」とは、今月の「キーマンに訊く」でセミナー形式のインタビューにご登壇いただいた大澤範恭先生です。大澤先生は厚生労働省出身であり、現在はAIP経営労務合同会社の代表として「病院の売り上げを伸ばす、働き方改革の実践法」と題したセミナーをウェブ上で開催されています。

 

働き方改革は2015年10月に発足した第3次安倍内閣が「一億総活躍社会の実現を目指す」と宣言したことからスタートしています。「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」「育児や介護との両立など、働き方の多様化」に対応するため、生産性向上とともに、就業機会の拡大や能力を存分に発揮できる環境を作ることを政策として掲げたもので、2018年には「働き方改革関連法」が成立しました。

2019年4月より順次施行され、大企業のみならず中小企業にも対応することが求められるようになり病院も例外ではありません。

 

行政側は働き方改革促進のため、医師の働き方改革に関する補助金、医療従事者の労働時間短縮に寄与する機器の特別償却制度など、各種優遇制度を設け病院側へ改革を促していることがうかがえますが、時間外労働の上限規制の導入、年次有給休暇の確実な取得、正規・非正規雇用労働者間の不合理な待遇差の禁止などが挙げられ、「医師の労働時間短縮計画の作成」や正規職員と非正規職員の仕事と処遇のバランスをとる「同一労働同一賃金への対応」など、経営サイドからすると負担が増すばかりです。

 

しかし大澤先生は、「働き方改革の目的は、法令順守だけにあるのではなく、職員も患者さんも満足し、その結果、病院の売上を伸ばし、経営が安定することによって、地域医療に貢献し続けること。そのためには、職員が満足して働くことができ、その結果、患者さんにも喜んでいただくことによって、病院の売上を伸ばしていくことが必要。」と述べています。

 

そして、自院の売り上げを伸ばすための戦略を次の3つの要素を取り上げ、解説していただきました。

 

・適正な労働時間・休日の確保 (医師の労働時間短縮計画)

・多様な勤務形態の活性化 (同一労働同一賃金への対応策)

・人事評価の適切な運用

 

このなかで人事評価の運用について、その目的は「人材を育成し、売り上げを伸ばすこと」と定義されています。職員のモチベーション向上のために、期中での観察を重点に置き迅速に評価されること、評価者のスキル向上には、人物評価ではなく行動や事実を評価すること、人事評価結果を昇給や賞与へ反映させることは避けたほうがよい、などその理由や適切な運用方法について具体的に説明いただきました。

 

経営の根幹は「ヒト、モノ、カネ」と言われますが、とくに職員が働きがいをもつことでそれが患者への満足度向上、そして自院の売り上げを伸ばすことができるようにすべてはつながっています。

 

法令を順守するためだけの視点ではなく、それを活用してすべての職員が同じ目標に向かって生き生きと働く職場を創り上げていく視点も持つことで、結果として売り上げ増および地域医療に貢献できること、そして大規模病院だけでなく中小規模の病院でも売り上げを伸ばすために大いに活用できるのではないかと感じたインタビューでした。