発行元:株式会社医療経営
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今月のトピックス
サバイバル時代に突入する医療業界に勝つ

池田 宣康

今月の視点:「コアな部分」を有する先生はなぜ開業して成功するのか?

厚生労働省が公表した2018年医療施設動態調査によると、無床診療所数は

95,171施設となっており、1998年の71,159施設から20年間で約24,000施設も増加しています。 この傾向はまだ続くと推測されますが、都市圏では競合診療所の増加が顕著となり、来院患者の減少に悩む先生や、新規開業しても集患に苦労する先生の話を耳にする機会が増えてきました。

 

そこで診療所の院長先生からこれまで数多くの相談に乗られてきたフクダ電子株式会社、病設企画課の箕輪 守氏に、「実例から学ぶ、クリニックの増患、集患対策」と題して院長先生からの相談や外来患者の動向変化など、診療所を取り巻く現状について伺ってきました。 そのインタビューのなかで強く印象に残ったのが「コアな部分」という言葉でした。

 

箕輪氏は開業支援の際、先生に「なぜドクターを目指したのですか」と聞くことにしているとのことですが、そこで開業して成功する先生と苦戦する先生が分かれる「コアな部分」を有しているかどうか判断できるようです。

 

その「コアな部分」についてインタビューでは、先生の理念や哲学ですか、と質問しましたが、もっと分かりやすい言葉にすると、先生が患者に提供したい「一貫した診療方針へのこだわり」の事ではないかと思い至りました。

では「一貫した診療方針へのこだわり」を持つ先生はなぜ成功するのでしょうか。 それは開業した目的や患者へ思いが明確におり、患者は先生が持つその一貫したものを敏感に感じ取り、共感する患者が来院するのではないでしょうか。

 

その一貫したこだわりを持つ先生がどのような行動をとったのか、患者に対して先生がとった行動を一つの例としてインタビューで聞くことができました。 それは待ち時間が長く不満を伝えた患者に対して、「一人の患者に時間をかけて診療することを心掛けているのでどうしても待ち時間が長くなる」ことを先生自らその患者に丁重に伝え、結果として他院を紹介したとのことでした。 これがまさに先生が有する一貫したこだわりであり、「コアな部分」として先生の行動や言動となって表出するのでしょう。

 

最近ではGoogle マップに来院患者からの口コミが掲載されていますが、それらの内容を見ていると同じ診療所でも、診療が早くて助かるという患者がいる一方、きちんと診てくれないと不平をいう患者がいます。 また、時間をかけて診てくれるという患者がいる一方、いつも長時間待たされると不平をいう患者もいます。先生からすれば、時間をかけて診てあげたい、反対に患者をできるだけ待たせずに診てあげたいという診療方針に対して、共感できない患者が不平をいうのでしょう。 どちらの先生にも一貫したこだわりを持っており、箕輪氏からお聞きした先ほどの先生のとった行動は、正に一貫したこだわりを持って患者対応した結果です。

 

これは患者への対応ばかりでなく、職員への対応、業者への対応、ホームページ、院内掲示に至るまであらゆる部分に先生の「コアな部分」が一貫した形となって現れます。

 

そして開業して成功するとは、先生の「コアな部分」に共感してくれる患者とスタッフに囲まれ、先生がストレスを感じることなく診療に集中できる環境におかれることではないでしょうか。

 

しかし「コアな部分」が時間の経過とともに明確さを失われていた場合、患者やスタッフに伝わらず、それが来院患者減やスタッフの離職につながります。もしそのような兆候が出ていれば、先生がドクターを目指した目的、ドクターとしてこれまでの過程で直面した患者との出来事、それに対するご自身の行動を振り返り「コアな部分」をあらためて明らかにしてみてはいかがでしょうか。 それが先生の確固たる診療方針として自院の繁栄につながることは間違いないと考えます。