今月の視点:訪問看護事業所運営の難しさと成功する要件
2019年の医療受給分科会において、地域ごとの外来医療機能の偏在について議論され、外来医師多数区域で診療所の新規開業を行う場合は、在宅医療、救急医療、公衆衛生などの機能を担うよう求めるという取りまとめがありました。
とくに在宅医療については今後さらに需要が増えていくことから体制整備は進められていますが、そのなかで医療と介護の連携を図る訪問看護事業所の役割が益々重要になってきました。
たしかに利用者数の増加に合わせるように訪問看護事業所数は増加していますが、全国約半数の自治体で事業所が不足しています。その1つの大きな原因として考えられるのが廃止・休止数です。
全国訪問看護事業協会の2021年度の訪問看護ステーション数の調査結果によると、東京では令和2年度の新規開業数は153件に対して、なんと55件が廃止、14件が休止となっており、開業数の44%となっています。これは他県でのデータをみても割合に前後はありますが、少なからず廃止・休止に追い込まれているのが現状です。
実際、在宅医療の現場では訪問看護事業所の運営に苦労されている、または連携している事業所との関係があまりよくないという先生からの話は以前からよく耳にしていましたので、訪問看護事業所の経営の難しさを感じていました。
ではなぜここまで多くの事業所が廃止・休止に追い込まれてしまうのか、その要因と訪問看護経営の成功条件についてお聞きしたいと思い、訪問看護事業所へのコンサルティングを行っているAAホールディングス株式会社の阿毛 裕理代表に、「医療機関が訪問介護を運営する意義とその成功条件」と題してお話しいただきました。
まず訪問看護事業所の廃業理由として3つ挙げていますが、一番の理由が看護師人材不足です。ただ人材不足だからといって看護師であればだれでも採用するのではうまくいかないようです。 適材を採用し気持ちよく働いてもらう工夫が必要です。そのためにはただ募集広告や人材紹介会社に依頼するのではなく、独自の採用ノウハウが求められます。また「看護師が言うことをきかない」ことはよく話題となりますが、看護師特有の考え方や行動パターンを理解しマネジメントする能力も必要とされます。
では事業所を成功に導く要件はなんでしょうか? これはデータをもとに説明いただきましたが、事業所廃止の最大の原因は小規模であることです。 全事業者の95%を占める10名以下の事業所がマンパワー不足と人件費率の高さから経営難に陥っていることが推測されます。
つまり成功要件は、開業前から綿密に計画を立て、多機能化・大規模化を目指して事業を行うこととなります。1つの目指すべき目標は、看護師が20-25名、患者数200名をいかに早く到達できるかとのことです。 スタッフが3-10名のうちは業務ストレスが増え事業所内の雰囲気が悪くなるようですので、いかにここから規模拡大を図れるかが成功の分かれ道といえそうです。
お話を聞き訪問看護事業所の運営で最も重要なポイントは経営マネジメントであり、阿毛代表が行っている中規模以上の事業所を目指すノウハウを持っているコンサルタントなどについて、規模の拡大を早めていくことが成功への近道ではないかと感じたインタビューでした。