発行元:株式会社医療経営
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今月のトピックス
サバイバル時代に突入する医療業界に勝つ

池田 宣康

今月の視点:病院経営を改善するために不可欠な2大条件

医療法人は非営利性が求められています。 確かに、医療法第7条では「営利を目的として、病院、診療所、または助産所を開設しようとする者に対しては開設認可を与えないこと」、また同第54条では「医療法人は、配当してはならない」と明記されており、剰余金が医療法人に帰属していることから非営利性が担保されています。しかし、非営利性とは収益を上げることを禁じていると解釈されるのでしょうか?

 

病院における経営改善を考えた場合、主たる目的は収益性の改善であり、収益を出さなければ自院をより良くするための人的および設備投資ができません。病院経営も事業であり、人員の確保、医療機器の導入、自院の修繕、建て替えなど、地域で求められる医療を提供し続けるには収益確保は必須条件です。

 

そこで今月の「キーマンに訊く」では、先月に引き続き鎌田代表に「これまで実践してきた病院経営を改善する具体的手法について」と題して、実務経験にもとづく病院改善手法についてお話しいただきました。

 

事業競争力再生へのアプローチでは、技術的な経営改善の手順について、また経営改善のケーススタディでは実践的な改善の事例について経営改善の実務にあたる部分についての説明でした。

 

そして経営改善を実現するためには不可欠な2大条件があると理解しました。

 

1つめの条件は、「機能の価値」と「地域での存在価値」をいかにマッチングさせるかという点です。

 

機能の価値」とは自院がやりたいこと・できること、つまり医療提供サービスの質や臨床実績、ソフト、ハードの保有能力、職員の能力、そして経営、管理能力などです。

 

一方で「地域での存在価値」とは競合医療機関の状況、地域住民から求められている医療サービスや評価になります。

 

とくに医療機関は地域密着型サービスであることを考えれば、地域住民から求められる医療サービスの内容を定期的に調査・検証しておくことは重要です。 地域住民の年齢構成と口コミなどの評価、将来の人口動態、地域開発など都市計画など、時代によって求められる医療は変化を続けています。

 

地域住民から求められる医療サービスの変化に合わせて自院の「機能の価値」をマッチングさせなければ収益の改善は見込めません。そう考えると経営改善とは、自院がやりたい医療ではなく、地域住民から求められる医療提供サービスを把握しどう擦り合わせていくかということになります。

 

2つ目の条件は「経営者の決断と実行」になります。病院経営は突然悪化するより、地域住民の年齢構成や人の流出入が変化することで徐々に悪化する傾向があります。そのため自院の医療提供を変化させていく必要性を感じていてもなかなか決断に踏み切れない状況もあります。しかし過去と変わらない医療提供をおこなっていれば「機能の価値」と「地域での存在価値」が大きく乖離し、いずれ経営が立ち行かなくなります。

 

そこで専門家の意見も取り入れ検討し総合的な判断材料を取りまとめ、最終的には経営者の大いなる決断が必要です。そして一旦決断を下せば経営者が必ずやり遂げるという決意をもって実行に移すことが求められます。どんなに効果のある改善手法と理解していても実行しなければ、何も手を打たないことと結果は同じです。

 

決断と実行は経営者しかできません。そして決断するかしないか、実行するかしないかはすべて経営者の手に委ねられていると気付かされる内容でした。