今月の視点:病院の医療・介護連携で成功と失敗を分ける要素
団塊の世代が75歳以上になる2025年を目指して、地域包括ケアシステムの構築が進む中で、200床以下の中小規模病院が介護事業にも参入し、地域住民との繋がりを強める存在となっています。しかし、医療事業で利益が確保されても、介護施設との連携がうまくいかず、法人全体の足を引っ張ることがあります。
そこで元病院グループ法人の本部長であり、現在は株式会社U-Styleの代表である宇夫方 衆(うぶかた しゅう)氏に「医療・介護事業で成功と失敗を分けるもの」と題して、医療と介護連携で成功と失敗を分ける要素について、具体例とともに語っていただきました。
介護施設単体で収益確保が難しいとされていますが、在宅診療を中心にした介護事業を組み合わせることで収益効果や事業拡大が期待できるということです。
特に興味深かったのは、サービス付き高齢者住宅や住宅型有料老人ホームの活用法です。収益性は低いものの、訪問介護や訪問看護を併設し、母体病院への入院によるシナジー効果を発揮することで、法人全体で大幅な収益増が期待できるとのことです。 宇夫方氏が挙げる成功と失敗を分ける要素の1つに、「目的と手段」があります。介護事業が目的か手段かを明確にすることで、上記のような発想が生まれるのでしょう。
収録で説明いただいた医療と介護連携で成功と失敗を分ける8つの要素は下記のとおりです。
1.医療法人の経営者は医師
介護事業のへ理解を深めることから始めよう
2.目的と手段
今やっていることが目的か手段か、必ず立ち戻る
3.集客部門と収益部門
顧客を集めるサービスか収益を上げるサービスか
4.効率と能率
バックヤードは効率 サービス提供部門は能率
5.経営と運営
経営は株式会社、運営は医療法人
6.労働力を制する者は地域を制する
顧客の奪い合いではなく、労働者の奪い合い
7.理念はブレることのない「波乗り経営」
報酬改定に合わせた柔軟な対応が必要
8.医療と介護の一体的サービス提供
医療のない介護は崩壊する 介護を見ない医療はその意義を失う
収録後に、宇夫方氏から病院の経営改善に関する話を聞くことができました。病院にコンサルタントが入るも、改善がうまくいかない事例があります。病院側の職員がコンサルの提案を理解できない場合や、コンサル側が病院の現実的な運営に経験が乏しいため、職員を動かすことができないことが原因であることが多いようです。
宇夫方氏は、実務経験が豊富でコンサルの提案が理解でき、現場の職員を動かすことができる立場として、病院側の外部職員としてコンサルタントと病院の間に立って仕事をされることもあるということです。期間限定で顧問として経営改善に携わる役割は、今後病院の経営改善を考えている経営者の方にとって貴重な存在である方と感じられる話でした。