発行元:株式会社医療経営
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今月のトピックス
サバイバル時代に突入する医療業界に勝つ

池田 宣康

今月の視点:成功するクリニックへの近道! 経営コンサルタント活用術

「初診、最新、自費の数字構成を分析すると、増患対策がうまくいっているかどうかわかるんですよ」

 

「開業3年で決まる! 成功するクリニック 失敗するクリニック」の第3回目は「事例から実際のクリニック経営を見てみる<内科系クリニックの開業から3年目>」と題して株式会社A&Kメディコンサル.comの佐藤代表に講義していただきました。

 

冒頭のお話は、クライアント先で実践しているコンサルティングの内容についていくつものノウハウを披露していただいたなかで、とくに強く印象に残った言葉です。

 

数字分析の裏付けは、厚労省から発出される「社会保険診療行為別統計」を参考にしながら、佐藤代表がこれまで数多くのクリニックを見てきた中の経験から導かれたそうです。 地域密着型の保険診療を行っているクリニックでは、新患20%、再診70%、自由診療10%の構成でかつ新患のうち初めての患者と再初診の割合が8:2であれば毎月新しい患者が20%きており増患対策がうまくいっていることが把握できるとのことです。

 

毎月クリニックから出てきた数字を様々な角度から分析することで、経営の問題点、課題などが見えてきます。 講義のなかで説明いただいた患者トレンドシートにでてきた数字をもとに院長先生と気になる点を経営者目線で話をすることで、先生自身が自ら改善点を意識することができ、翌月の数字を分析してみると解決に向かっていることはよくあることだそうです。

 

また、開業当初からコンサルティングを行う場合、定数管理の重要性を説き院長先生と目標と決め共有することで自然とその目標に向かって進んでいくと言います。 たとえば、開業3年で法人化する、そのためには来院患者平均人数、診療報酬単価、売上など医療法人化の目安を決めるなどです。 事例で取り上げられたクリニックでは、開業直後から新型コロナウイルスの影響を受けたにもかかわらず、1年前倒しで医療法人化することができたそうです。

 

それと同じくして定性管理の重要性も説いています。 新型コロナウイルスで開業当初から外的環境が悪く患者が一向に増えないなか、危機対応力が求められます。 来院患者に対してお盆にアンケート調査を実施したところコロナ禍でありながらもインフルエンザの需要が多いこと、患者からのクリニックの認知率が低い原因は入り口が目立たないこと、など調査分析でわかり、インフルエンザ接種から来院患者を増やした、景観を気にする大家さんと交渉して看板を新しくつけさせてもらった、など手を打つことで増患対策となったこと。 また2020年春に来院患者数が落ちたため、院長先生には資金繰り悪化に備え念のための借り入れを助言し安心して診療に専念できる環境を整えた、コロナで職員がなかなか集まらないなか突然職員が辞めると言われ、面談して採用者がくるまで待ってもらった、など次々と起こるトラブルや課題に対応し解決していくことで自然と外的要因にも強い経営体質を作り上げることができたのでしょう。

 

クリニックの院長先生にとって、経営で一番重要なことは「診療」であることは間違いありませんが、新型コロナウイルスなど突発的な外的要因への対応や年々増え続ける事務処理を先生自身が限られた時間でこなしていくことは難しくなっているように思います。

 

そのためには、定数管理と定性管理、つまり数字と問題点を常に分析把握して意見してくれる存在がこれからの院長先生にとって極めて重要になってきます。

 

事務作業代行を依頼するのではなく、診療に最大限のエネルギーを注ぐために自院の事務効率化を図る、課題対応するにはどうすればよいかアドバイスをもらうことで院長先生に経営能力が備わり自信をもって経営していけるのではないでしょうか。

 

経営は、正解のない答えを探し続ける努力、好奇心が必要とされます。スタッフ一人分の給与分の費用がかかったとしても、それで先生のブレーンとなるコンサルタントを雇用すると考えれば費用対効果からみても非常に効率の良い投資ではないでしょうか。