今月の視点:今こそ考えるべき医事スタッフの重要性と戦力化
今月の「キーマンに訊く」12月号は診療報酬コンサルタント飯野氏へのインタビューでした。 飯野氏はご自身がもともと医事スタッフであったこと、また現在はコンサルタントとして医事スタッフから相談を受ける立場にいることから、院内であまり目立たない存在である医事スタッフの置かれている立場や重要性、そして医事スタッフの働き方が病医院経営に少なからず影響を与えることをお話しいただきました。
病医院が医師、看護師を中心として成り立っている職場であることは間違いありません。しかし受付業務や診療報酬請求業務など診療以外のさまざまな業務を行う医事スタッフの協力がなければ運営が成り立たないことも事実です。
2014年に米国テキサス州ヒューストンにあるテキサス州立大学MDアンダーソンがんセンターへ見学に訪れた時のことです。 病院見学中に外を見ると敷地内にひときわ大きなビルが見えたので何の建物か質問したところ、案内係の看護師から「あのビルには病院の事務スタッフがおり、かれらのおかげでこの病院の運営がスムーズに行われている」とのことでした。この病院では医師、看護師、事務スタッフがお互いリスペクトし対等の立場で仕事をしていることが伝わってきて感銘を受けました。
翻って日本の病医院での現状を考えると、医事スタッフの立場や評価は医師や看護師と比較して低いように思われます。しかし今後、診療報酬のマイナス改定や競合医院の増加により、経営がますます厳しくなることが予想されます。 そのため患者から支持されるには、診療だけでなく接遇も含めたサービス業であるという認識を全員で共有していく必要性が高まっており、医事スタッフが担う役割も大きいといえます。 そのため、これからは医事スタッフの能力向上が求められると同時に院内における地位の向上も図られるべきであると考えます。
ここで課題となるのが医事スタッフの能力に見合った評価の方法です。 医師、看護師は資格者であるため、資格者でなければできない業務の責任範囲が決まっており明確な評価を得られやすくなっています。一方で医事スタッフはどのように評価されるべきなのでしょうか。
例えば、電話対応や受付対応、事務処理、診療報酬の請求漏れや返戻の改善提案、スタッフのリーダーであればスタッフ全員の取りまとめなど、それぞれの能力に応じ評価基準を作成することはできるはずです。受付対応が患者からの口コミ評価に影響しますし、診療報酬の請求漏れや返戻額を減少させることが年間の診療報酬アップに直結します。
自院に合った評価制度を策定し基準を設けることで医事スタッフの仕事に対する心構えも変わるはずです。医師や看護師と同じように責任範囲や能力に応じた給与体系や待遇を確立すれば、プロフェッショナルとしての自覚が芽生え高いモチベーションを持って業務に取り組むことにつながります。 それがひいては重要な戦力として自院に大きな貢献をもたらしてくれるのではないでしょうか。