今月の視点:中小規模病院での業務改善が人材不足を補う可能性
医療業界では、2024年4月からスタートする医師の働き方改革の義務化が間近に迫っています。 そこで医師が担ってきた業務の一部を、看護師、薬剤師、臨床検査技師などにタスクシフトして少しでも負担軽減させることが求められています。しかし、医師ほどではないとしても看護師、薬剤師などコメディカルも人手不足が常態化しています。
人材不足は、高齢化社会の進展、医療技術の高度化などの要素とも絡み合って、今後も解消される見込みはありません。とくに深刻な人材不足が問題となっている中小規模の病院では、限られた人材で質の高い医療サービスを提供し続けるための戦略が求められています。
解決策の一つとして、既存の人材を最大限に活用し、業務の遂行方法を見直す必要があると考えます。
しかし見直しと言っても単なる業務の効率化を図るだけでは、根本的な問題解決には至りません。効率化は既存のプロセスをより良くすることに焦点を当てており、生産性の向上、コストの削減、時間の節約など、効率を高めることに重点を置きますが、過度な効率化はスタッフの負担を増やし、疲弊や離職を引き起こす可能性が高くなります。そのため、効率化にもつながる業務改善に目を向ける必要があります。
業務改善は、単に既存のプロセスを迅速にこなすことではなく、プロセスを根本から見直し、不要なステップの削除、また全く別の手法を取り入れるなどにより質の高い方法へと変えていくことです。これは、時間の節約だけでなく、スタッフの働きがいや患者さんからの満足度の向上、リスクの軽減などにもつながります。
ただ、日常業務が習慣化しているスタッフだけでは、業務改善のポイントが埋もれてしまい、どこから手を付けていいのかわからない場合があります。 そのような時は、スタッフ全員が改善のプロセスに参加し、意見を出し合うことで、見落としていた問題点を浮き彫りにする必要があります。 また経験の浅い新人の方が、思わぬ改善点を指摘してくれることもあるように、外部から客観的に指摘してもらうことも有効な手段でしょう。
そして改善された業務プロセスを定着させるためには、一度の改善で満足せず、継続的に業務プロセスを見直し、改善を行う文化を根付かせることが大切です。地道なことですが、習慣化するまで粘り強く続けることが非常に有効な戦略となります。
そのためには組織全体のコミットメントが不可欠です。特に、資格者が多い病院においては、部署ごとの垣根を取り払うためにトップマネジメントの強力なリーダーシップが、改善を遂行する原動力となります。業務改善の重要性を理解し組織全体の連携を促すこと、またスタッフに明確な方向性を示すと同時にスタッフの意見を聞き入れる姿勢を示すことが重要です。
そして成功例を広く共有し、改善活動を通じて得られた成果を評価することで、スタッフのモチベーション維持と業務改善文化が根付くのではないでしょうか。
中小規模病院における業務改善は、人材不足という厳しい状況の中でも、質の高い医療サービスを提供し続けるための鍵となります。 単なる効率化ではない業務改善を通じて、スタッフの働きやすい環境を整え、患者さんにとってもより良い医療サービスを実現することが可能だと考えています。