発行元:株式会社医療経営
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今月のトピックス
サバイバル時代に突入する医療業界に勝つ

池田 宣康

今月の視点:一般社団法人(非営利型)の診療所開設の特徴と注意事項

一般社団法人とは2006年の公益法人制度改革により「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成18年法律第48号)」に基づいて設立される社団法人で、税制上「普通型」と「非営利型」の2種類あります。

 

医療法第七条においては「営利を目的として、病院、診療所又は助産所を開設しようとする者に対しては、前項の規定にかかわらず、第一項の許可を与えないことができる。」となっていますが、一般社団法人でも非営利型であればこの条件を満たすことが可能のようです。

 

昨今ではこの一般社団法人(非営利型)での診療所開設が増えてきているようですが、なぜ医療法人社団を選択しないのか疑問に感じていました。

 

そこでこれまで20件の一般社団法人(非営利型)診療所開設の手続きをおこなってきた望月亜弓行政書士事務所の代表である望月亜弓様に「一般社団法人(非営利型)の診療所開設の検討について」と題してお話をうかがいました。

 

まず、一般社団法人による診療所設立の特徴として第1に挙げられるのが「非医師が代表理事になれる」ということでしょうか。医療法人の理事長は基本的に医師または歯科医師でなければいけませんが、その制約がなくなります。

 

もう1つは都道府県の認可が必要なく6ヶ月程度かかる医療法人手続きと比較して一般社団法人は登記すればすぐに設立できるとのことです。 さらに都道府県管轄ではありませんので事業報告書などの提出義務がなくなります。

 

一方、注意事項として挙げられるのが「非営利性の確保」です。資料でご説明いただきましたが、次の2点を定款に定める必要があります。

 

(1)当法人は、診療所の運営上生じる余剰金を役職員や第三者に配分しません。

(2)当法人が解散した場合の残余財産は、当法人の出資者又はこれに準ずる者には帰属しません。

 

たとえば、一般社団法人で行う事業は自由ですが、他の事業の資金調達の目的で医業を営むことはできません。 つまり、配当禁止の観点から同じ一般社団法人内でおこなっている他の事業があっても医業収益の資金を流用できないとのことです。

 

もう1つの重要な注意事項が各保健所の対応のようです。一般社団法人においても医療法人と同様に診療所開設許可には、保健所の認可が必要となりますが、保健所によって対応がまちまちのため必ず事前相談のうえ申請する必要があり、保健所から認可が下りるには2か月以上みておいた方が良いとのことです。

 

実際はどのような方が一般社団法人による診療所開設を必要とされているのでしょうか。1つ例として挙げていただいたのが在宅クリニック、訪問看護、介護事業との連携を深めるための一般社団法人設立です。 また院長のご子息が非医師であるが、継承してほしいための一般社団法人設立もあるようです。

 

最後に望月氏が強調していたことが、一般社団法人でなければならない明確な目的や非医師が代表になれることを悪用しないということでした。 悪用される事例が散見されるようになると行政側から制限のかかる可能性は否定できません。

 

一般社団法人による診療所開設のメリットが活かせるとお考えの方がこれから増えてくると思われますが、設立する側の医療に対する理念が強く求められると感じたインタビューでした。