発行元:株式会社医療経営
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今月のトピックス
サバイバル時代に突入する医療業界に勝つ

池田 宣康

今月の視点:クリニックで増える労務トラブル、防止策と対応策

どのクリニックでも組織である以上、職員から何らかの不平や不満が起きることは避けられません。とくに小さな組織であれば逃げ場がなく、ストレスが蓄積されやすいこともあるでしょう。それでも一昔前は職員が弱い立場におかれていたこともあり我慢していた背景がありました。

 

しかし、慢性的な人材不足で売り手市場が続いていること、権利意識が強くなり雇用される側の主張が通る傾向になっています。不平、不満を抱えた社員が内部告発によって企業が社会的に大きなダメージを受けるニュースを観ることもしばしば見受けられます。

 

また日本人の考え方、生き方がある程度みな同じ考え方であったものが、価値観、仕事観、コミュニケーションの取り方などが多様化し、これまで経験したことのない相手の考えや行動を目の当たりにする機会も増えてきたように思います。

 

大きなトラブルや訴訟になる原因は、職員からの不平や不満を放置しておくこと、または感情的な場面で対立してしまうことですが、それは会話不足、コミュニケーション不足からきていると言ってもいいでしょう。

 

トラブル防止のためには、普段から職員に目を配り不平、不満を敏感に感じ取ってコミュニケーションをとることが、トラブル解決には一番の道です。

 

診療が忙しくて大変かと思いますが、定期的なミーティング、個別面談などコミュニケーションなどの時間を作ることが必要です。職員からの不平、不満を聞く際には、感情的に職員と対立することを避け、なぜそのような発言をするのか冷静に振り返ることも大事です。

 

またよくある事例として、院長には言えないまま職員同士で不平、不満が蓄積され突然トラブルが表面化することです。 それを回避するには職員の間にはいり話を聞けるコンサルタントなど第三者を立てることで大きな問題にならないよう配慮しているクリニックもあります。

 

コミュニケーションの勉強をするセミナーに参加することも有効です。日本人同士、以心伝心で察してほしいという文化は素晴らしいと思いますが、労務トラブルを避けるには自分の考えが伝わる技術やコミュニケーション能力を引き上げることも必要です。

 

それでも大きなトラブルとなる可能性はあります。今ではインターネットで簡単に情報を入手できる時代です。昔は専門家しか分からないことでも今ではネットで簡単に情報が手に入ります。労働基準監督署に飛び込めばいいなど、相手を困らせるために何をすればいいかまですぐに検索できる時代です。訴訟になれば、院長が矢面に立たなければならず、診療に悪影響をおよぼすことになります。

 

そのようなことも想定して、院長が労務に関するレクチャーを専門の社労士の先生や弁護士の先生から受け、専門家に依頼して労務契約関連の整備もしておくことが重要です。

 

今月の「キーマンに訊く」ではKDS労務管理事務所の秋元譲氏に、「クリニックの労務トラブルの事例と防止策」と題してお話しいただきましたが、例えば、重要性を説いている就業規則は、法令に次ぐ効力を持ち、また就業規則がなければ懲戒解雇することができないとのことです。 したがって、就業規則は作成義務がないクリニックでも必須だと言えます。

 

まずは防止策としてコミュニケーションを欠かせない事、その一方で専門家に依頼して労務関連の書類整備をしておくこと、それが結果として自院を守ることになると感じたしだいです。