発行元:株式会社医療経営
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今月のトピックス
サバイバル時代に突入する医療業界に勝つ

池田 宣康

医療現場でのアウトソーシングの是非│2018年2月

 

医療現場でのアウトソーシングの是非

 

大学病院での医師の過重労働問題が頻繁にニュースとして取り上げられていますが、
これと同じ現象が開業診療所の現場でもよく聞かれるようになりました。

 

今、医療機関を取り巻く環境は大きく変わりつつあります。
手間のかかる診療に報酬の比重を大きくし、これまでと同じ診療をしていては
全体的な診療報酬は下がるようになりました。そのため、診療報酬を維持するため
に診療時間を増やすなど先生の負担が増しています。

 

また、労働人口の減少からスタッフの確保が困難になりました。在宅復帰の促進で
来院患者は増加する一方、スタッフ不足が慢性化し、働くスタッフが疲弊
してきている現状があります。

 

このように、医師に求められる診療以外の業務項目が増加しており、
心労で体調を崩したり、過労死する先生がいらっしゃるのはご存知の通りです。

 

こうした状況の一方で、今月号のインタビューCDでもご紹介しているように、医療
機関向けに外部支援を行う会社は増加しており、在宅、内科などある分野に特化した
サービスを提供する会社が次々に生まれています。

 

心身ともに負担が増える現状を少しでも改善する手立てとして、こういったサービス
を利用し、業務負担の軽減を図るべきなのでしょうか?

 

確かに、導入にあたっては様々なハードルを越える必要があるでしょう。例えば、
アウトソーシング先の個人情報の取り扱いについての懸念や、導入にあたってスタッフの
反発などです。 また、信頼のおけない他人には任せられない、できるだけ自院内で
完結させたいという先生自身の考え方と相いれない場合があるでしょう。

 

しかし今後、開業診療所に求められる役割はますます多様化していきます。
院内業務もさることながら、地域包括システムのもと病院や他の診療所との連携も進んで
くると、そのための事務作業も増していきます。このような外部環境の変化をただ受け
止めるだけで、これまで同様、自院ですべての業務を抱きこむと、そのうちスタッフ
からの不満や先生自身の慢性的な疲労など様々な歪みが生まれ、結果として診療に
悪影響がでてくることは大いにあり得ます。

 

そこで、忙しい中でも一度立ち止まり、先生でなくてもできる業務、スタッフでなく
てもできる業務、スタッフより外部に依頼した方が効率が良い業務など分類し、外部
支援してもらえる会社があれば、真剣に検討することは重要な事と考えます。

 

当たり前ですが一番重要なことは、患者と接する時間をいかに確保するかです。
一方で、診療以外のアウトソーシングにより業務の効率化を図ることで時間の余裕が
生まれ、それが診療の質の向上につながり自院評価が高くなる一方で、スタッフの
負担が軽減でき満足度も向上する。 この好循環で、先生自身の心身負担も大きく
軽減できることになります。

 

自院で行っている業務の棚卸をしてみることで、アウトソーシング活用の
可能性を見出していく、あるいは自院内でのさらなる業務効率化を追求する、
考え方はそれぞれですがアウトソーシングの活用は将来的にも有効な
選択肢として積極的に検討する価値があると考えています。