発行元:株式会社医療経営
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今月のトピックス
サバイバル時代に突入する医療業界に勝つ

池田 宣康

今月の視点:院長のコミュニケーション力

 院長はコミュニケーション能力を向上させていくべきでしょうか。この問いに否と答える先生はいないでしょう。 しかし正直なところ、苦手または煩わしいと感じている先生は多いのではないでしょうか。

 

 確かに、これまでコミュニケーションについて学ぶ機会がなかったため、どう対応すべきかわからないといったことがあるかもしれません。また、院長の主な仕事は診療することであり、できるだけ診療に専念したいと考えるのはもっともなことです。

 

 しかし、現場では、院長とスタッフ、スタッフと患者、スタッフ同士などでコミュニケーションをとることは不可欠で、組織運営をしている限り避けることはできません。

 

 そして今後は、以下3つの観点からますますコミュニケーション力が院長に求められることになると思われます。

 

 1つ目は、病医院に対する患者側の意識の変化です。 病医院もサービス業の一業種という感覚の人が増えてきました。 もはや比較の対象は他の病院ではなく他のサービス業です。

 

 2つ目は、組織のあり方の変化です。 今月のインタビューで田岡社長が言及されているように、ピラミッド型の組織運営は過去のものになりつつあります。スタッフも様々な考え方を持った人の集まりであり、最終判断を下すのは院長であるとしても、上からの意見を押し付けるのではなく、スタッフ各個人の考え方や意見も尊重することが求められます。

 

 3つ目は人工知能(AI)技術の進歩です。 将来的に、患者の症状から適正な治療、投薬をAIができるようになると見込まれる中、患者が発する言葉だけでなく、患者の顔の表情や態度、気持ちなどから多面的に診ることが、ドクターの主業務になると言われています。

 

 このように必要不可欠、かつ重要性がますます高まるコミュニケーション力とは、そもそもどのようなものでしょうか。コミュニケーション力とは、人の話や気持ちを深く理解する傾聴力と、自分の考えや気持ちを的確かつ円滑に伝える伝達力の2つに定義できます。

 

 この傾聴力、伝達力を向上させるには、相手が発する言葉だけを聴いたり、言葉だけ伝えればよいわけではなく、表情、しぐさ、雰囲気などから相手の言わんとすることを察する、また自分の真意を伝えるのに適した態度をとるといった努力が必要となります。 なぜならコミュニケーションにおいては、声のトーンやしぐさ、見た目など非言語情報が90%以上の割合を占めているからです。

 

 患者が症状を説明している間、患者の表情、声の調子、手の動きなど観察しているでしょうか。何か話したそうなスタッフはいないでしょうか。 伝えたつもりのことがその通り実行されているでしょうか。 こう考えていくと院内で起こるさまざまなトラブルの背景にはコミュニケーション不全があることが多く、コミュニケーション力を高めることで回避できることも多いと気付かされます。

 

 日ごろから意識してコミュニケーション力を磨き向上していくことで、スタッフの働きやすさ、患者との良い関係構築ができ、それがスムーズな組織運営、ひいては地域での良い評判へと繋がっていくのではないでしょうか。