発行元:株式会社医療経営
TEL

今月のトピックス
サバイバル時代に突入する医療業界に勝つ

池田 宣康

今月の視点:進む「医業と経営の分離」と対応について

今秋出版予定の病医院の事業承継、M&Aの本を一部執筆することになった関係で、第三者承継について会社や医療機関に取材をしてきました。 その取材を通じて、病院における医業と経営の分離が予想以上に進んでいることがわかってきました。

 

これまで理事長・院長が診療の傍らで経営全般も担っていました。 しかし、病院の7割が赤字になっている現状から、医業と経営を両立させることが限界にきているのではないかと思われます。歯科医院業界ではすでに20年以上前から、経営に専念した理事長が分院展開や既存の歯科医院を吸収し規模の論理で収益を上げる一方、収益が上がらず苦労している歯科医院が多数存在しているように勝ち負けが明確になっています。クリニックにおいても、社会保障費が逼迫している状況下、診療報酬のマイナス改定や競合医院の増加などにより赤字クリニックが今後増えれば、歯科と同じ厳しい優勝劣敗の世界が待ち受けています。

 

今月のインタビュー CDは「診療報酬改定から見たこれからの病医院経営」のセミナーを収録したものです。セミナーでは、今後の医療の方向性を示す数々のヒントがちりばめられていますが、一昔前のように施設基準や人員配置基準を満たしただけでは収益に結びつかなくなってきたことはご承知のとおりです。 病院の場合は病棟転換や人員配置など重大な決断を下さなければならない場面も出てきますし、それに伴って職員の意識改革も行う必要があります。

 

今後の収益向上を図るには、理事長・院長がこれらすべての立案と実行に適切なタイミングで取り組まなければなりません。しかし、的確な情報収集と分析をしたうえで方向性を決め実行する力、職員を説得し新しい方向に導く推進力など、自院の変革にはとても大きなパワーが必要となり院長一人ですべて遂行することは困難です。

 

ではどのように対応していけばよいのでしょうか。

 

院長は医業に徹し経営は専門家に任せる方法、院長と同じ目線・意識レベルで語ることのできる適切な相談相手を持つ方法、相応の所得を保証して優秀なスタッフを迎い入れて経営の一部を任せる方法などがあります。また外部コンサルタントを利用するというのも有効な方法だと考えます。 コンサルティングの現場に同行する機会が幾度かありましたが、実際に50床に満たない病院でも年間数千万円もの収益改善を図ることができる方策を示した例がありました。 コンサルティングの依頼にあたって費用は発生しますが、専門性を持った第三者に客観的な経営診断してもらい、今度の収益改善のアドバイスを受けられるメリットは大きいと考えます。

 

医業にだけ目を向けていては経営が成り立たなくなってきました。目の前に切迫した現実が来る前に、先手を打てる経営について今一度じっくりと考える時間を作ってみてはいかがでしょうか。