発行元:株式会社医療経営
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今月のトピックス
サバイバル時代に突入する医療業界に勝つ

池田 宣康

今月の視点:企業の不祥事から考える、自院の危機管理と心構え

最近、大手企業での改ざんや個人情報の漏洩など意図的であってもなくても不祥事としてマスコミで大きく取り上げられることが増えてきました。一般企業での話ではありますが、病医院の経営者として考察しておくべき点はないでしょうか。

 

確かに、何万人もの従業員が勤務している大企業と自院とでは、比較対象としてイメージが湧かないかもしれません。 しかし、規模の大小こそ違えども組織で動いている以上、病医院でも不祥事が明るみになり、経営基盤を揺るがすような深刻な状況になる可能性は決して低くないと思われます。

 

例えば、これまで企業内で不祥事が発生していた場合、その情報が外部に漏れることはあまりありませんでした。 また、内部で気づきすぐに対応すれば、内密に収めることができたのです。 しかし、今では不祥事が発生した時点で、すぐ外部に漏れてしまうリスクを抱える社会になりました。 なぜなら、ネットを通じ組織内の出来事を内部の人が自分の素性を明かさず容易に社外へ発信できるようになったからです。  社内の問題意識の低さや自浄作用が期待できない事への失望などから正義感にかられて内部告発する場合もある一方、溜め込んだ会社への不満が不祥事の告発という形で表出することもあります。

 

今回、ネットの風評被害対策業務を請け負っているソルナ株式会社の三澤社長とのインタビューを通じて、こういったリスクが今や身近なものであることに改めて気づきました。

 

ではこのようなリスクをどうやって回避すればよいのでしょうか。 そのためには、経営者が自ら透明性のある経営環境を作り上げることです。 そして日頃から組織内の目配りを怠らず、コミュニケーションをとり、問題が顕在化する前にキャッチし対策を施すことです。

 

それには経営に関連する業務にブラックボックスを作らないということです。業務を職員に任せた場合でも、実務の細かい点までチェックする必要はないとしても、その後、経営者自身が全く関与しないと管理の甘さに歯止めが利かなくなり、不祥事の温床となりやすい状況を作ってしまいます。

経過は常に経営者が管理しておくことが極めて重要です。

 

それでも万が一、トラブルが表面化してしまった場合、経営トップの対応がその後の経営状況を大きく左右します。 一言でいえば「逃げない」ことです。大きなトラブルほど誰でも逃げたくなるものですが、どんなに嫌な事であっても決して人任せにするのではなく、自分が矢面に立って誠実に対応していくことです。 それが結果的に素早い信頼回復に結びついてくるのは明白であり、それこそが経営者としての真価を問われることになると言えましょう。