発行元:株式会社医療経営
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今月のトピックス
サバイバル時代に突入する医療業界に勝つ

池田 宣康

今月の視点:職員不足を解決する「多様性の受け入れ」と「院長のビジョン」

ここ数年、人手不足が社会問題として大きくクローズアップされ、各地の病医院でも人手が足りず困っていると耳にする機会が増えました。 特に医療業界は人に依存する業務が多く、看護配置基準のクリアなど収入に直結することもあるため深刻な問題です。また2025年には団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者となるため、医療ニーズだけでなく介護ニーズが今後、飛躍的に増加することはご存知の通りです。 2018年度に厚労省が発表した第7期介護保険事業計画では、2025年に34万人もの介護人材が不足すると予測しておりさまざまな対策が練られていますが、その一つが外国人介護士の受け入れ態勢の整備です。

 

そこで今月の「キーマンに訊く」では、「介護士不足問題の解決策となるのか?

外国人介護士受入れの最新事情」と題して、先日インドの介護士養成学校の視察から戻られたネクストシェアリング株式会社の八幡社長に、外国人介護士受け入れの最新事情について話を伺ってきました。 視察には多くの介護施設を傘下に置く大手病院グループも参加したそうで、外国人の受け入れに積極的な施設もある状況が窺えます。

 

ただ自院の施設に外国人を受け入れることに抵抗がある先生も多いと思います。 確かに外国人と働く機会が少ない日本の場合、一緒に働くことに違和感を覚えることや即戦力として働けるのかなど懸念はあります。しかし人口減少が本格化しているなか、職員募集をかけても応募者がないという現象はすでにいたるところで起こっており、現状に留まっていては職員不足問題が解決しないことは明らかです。

 

そこで外国人を受け入れる一つのヒントとして参考になるのが、昨年日本で開催されたラグビー・ワルドカップの日本代表です。「ONE TEAM(ワンチーム)」というスローガンは代表の大活躍もあって2019年の流行語大賞に選ばれました。 「みんながひとつになる」と想起されるこの言葉は、さまざまな言語や文化が集まる外国出身の選手たちが多いチームで、お互いを尊重し目標を達成するために一丸となって対戦するイメージが湧いてきます。 実際に、文化や考え方、価値観が違っても日本代表として戦う選手たちの姿をみて、これまでにない大きな声援を受け盛り上がりを見せました。

 

この「ONE TEAM(ワンチーム)」とは「多様性を受け入れ目標を達成する」と私は理解しています。「多様性」という言葉は、ビジネスの世界ではすでに使われています。「多様性を受け入れる」とは、「ひとりひとり異なる価値観を互いに尊重し、受容すること」を指しますが、ラグビーの日本代表チームはベスト8を目指し見事に目標を達成しましたが、多様性を受け入れ選手間やスタッフとの文化や考え方の違いを認め合ったことが快進撃につながったことは間違いないでしょう。

 

外国人の受け入れは、医療・介護業界においてもこれから益々浸透してくると推測されます。 さらに昨今は、同じ日本人でも多種多様な考え方や価値観を主張するようになりました。つまり外国人に限らず、日本人が働く場合も「多様性を受け入れる」体制が求められるようになったのです。ここで「ONE TEAM(ワンチーム)」として機能し自院の繁栄大きく貢献してもらうために必要なことは、さまざまな考え方や価値観を持つ職員の集まりであっても目指すべき目標が同じであることです。

 

その目標を掲げる礎は院長のビジョンです。「ONE TEAM(ワンチーム)」を作る上で、病医院のトップである院長が自院は何のために存在しているのか、何を成し遂げたいのか明確に示すことです。 それに賛同する職員に各々の役割や存在意義が芽生え、さまざまな価値観を持ちながらも目標が明確となり、一丸となって進むことができるのではないでしょうか。ひいては職員が自ら積極的に貢献してくれる働きがいのあるチームとして確立できれば、職員不足問題を解決する一助にもなることは間違いないと考えています。