発行元:株式会社医療経営
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今月のトピックス
サバイバル時代に突入する医療業界に勝つ

池田 宣康

今月の視点:煩雑化する診療所経営に対応するための方策

今年2月、厚生労働省の「医師需給分科会」が医師偏在対策に関する意見をとりまとめました。 各都道府県・医療圏ごとに「医師偏在指標」を基に医師多数区域と医師少数区域に分け、少数地域では医師確保の方針・目標数を設定して医師確保施策を進めていきます。

この分科会では、外来医師の多い地域での新規開業には、「在宅医療」「夜間・休日の診療」「学校医、産業医、予防接種等」の機能を求めるなど、外来医療のあり方についても議論されています。

これは新規開業の制限が設けられる可能性を示唆していますが、既存の診療所にとっても無関係なことではありません。 たとえば自院に上記の機能がない場合、それに対応した診療所が近隣に開業すれば手ごわい競合医院となります。

特に在宅医療については病院からのシフトが進んでいますが、今後は診療科を問わず在宅患者を診る診療所が地域から求められていく事になると予測されます。団塊世代の多い都市圏を中心に在宅医療に取り組む診療所の不足が続くと予想されることから、対応できる診療所へ患者が移行する可能性が高くなります。

しかし診療所に新しい機能が求められることによって、そこで働くドクターやスタッフの業務が増え、より負荷がかかることになります。さらに今後は手間のかからない診療報酬に対する単価の低下や、人口減少によるスタッフ不足がおこるにもかかわらず病院から地域に戻される患者の増加が見込まれるため、診療所にかかる負担は増加する一方です。

このように自院を取り巻く環境が変化する中、院長1人で診療からマネジメント業務まですべての業務をかかえてしまうと、院長のプライベートな時間が削られ、それが生活の質の低下につながり、引いては診療に悪い影響を及ぼすことになりかねません。

診療所経営ではドクターの果たす役割が非常に大きいため、過重な労働が続き診療に支障がでることは避けなければなりません。 そのため一度、院長自身が行っている業務について振り返り、院長でなくてもできる仕事をかかえていないかリストアップしてみてはいかがでしょうか。意外と診療以外の雑務に忙殺されているかもしれません。

すでにスタッフへ事務業務を任せている先生も多いかもしれません。しかし業者などとの対外交渉や顧問税理士との打ち合わせ、その他競合医院対策やスタッフが働きやすい環境作りなど、戦略や戦術まで必要となる業務は専門のノウハウ習得や情報収集が必要となり、片手間でできるものではありません。

そこでその対応策として病院のように事務長を雇うことを考えてみてはいかがでしょうか。院長自身が抱えている診療以外の業務を削減でき診療に集中できる環境が整うことは診療所経営にとって極めて重要です。

ただ、優秀な事務長を雇い入れるにはそれなりの人件費が必要となりますし、事務長候補を探すのに難航することも考えられます。そのような場合は、今月の「キーマンに訊く」でインタビューしたMedファインの井上氏のような優秀な外部委託先を探すことも1つの方法です。

これから診療以外の業務が増えることは確実です。毎日が非常に忙しい院長であればこそ一度立ち止まって、業務のシステム化や外部委託を利用することで生産性が向上すれば診療所経営に良い循環が生まれることは間違いありません。