発行元:株式会社医療経営
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今月のトピックス
サバイバル時代に突入する医療業界に勝つ

池田 宣康

今月の視点:新型コロナで加速する、これからの診療所経営

新型コロナウイルスの感染拡大によって1都3県で延長されていた非常事態宣言はコロナ患者の減少が一進一退のまま3月21日に解除となりました。 新たに変異株も急増しておりコロナ感染による影響はしばらく収まりそうにありません。

しかし昨年の4月、5月の新型コロナウイルス感染による病医院の収益悪化による心配の声は、現時点であまり聞かれなくなりました。 助成金やコロナ融資によって医療業界に潤沢な資金が投入され、当面の間キャッシュフローに問題ない病医院が多いと推測されます。

ただ、いずれコロナ禍による騒動はおさまり、以前のように普段の生活に戻る日が来ます。 そのとき、外来患者の受診行動はコロナ前にもどるのか、診療報酬の行く末など、診療所経営にどんな影響があるのか気になるところです。

「キーマンに訊く」4月号では引き続き「新型コロナウイルスで加速する医療経済と医療経営の変化」と題し保健医療経営大学教授 白木秀典先生に、これからの診療所の医業経営について、お話をうかがいました。

診療所を取り巻く環境として今後どのようなことが想定されるのか、白木先生は患者サイドと診療所サイドでそれぞれ次の通りまとめています。

 

患者

1) 人口が減少

2)来院回数の一層の減少

3)選別が厳しくなる(SNSの普及)

 

診療所

1)IT化度合が一層集患に響く

2)人手不足が一層深刻になる

3)患者からの信頼度の差がより顕著になる

 

たしかに2009年をピークとして日本はすでに人口減少社会を迎えています。総務省の人口動態調査では2020年1月1日時点の人口が前年から初めて50万人以上の減少となっています。この数字は、東京都でいえば江東区の約51万人、都道府県でいえば鳥取県の約55万人に近い人口が1年で消滅したことになります。

来院回数については、薬の処方日数の長期化による来院回数の減少や、高齢者の受診抑制などが顕著に現れていますが、コロナ後も完全に元に戻らずこの傾向は続くと考えておいた方がよいでしょう。

ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)については、グーグルの口コミなどの評価に自院がさらされるようになりました。 厚労省の平成29年度受療行動調査概数の概況によると、満足度の一番が、医師による診察、治療内容、2番目が医師との対話になっていますが、SNSの口コミで書かれる内容にもなっており、事実の成否にかかわらずその評価を信じて来院するかどうか決めている患者も増えてきていると感じます。

これらの事象は新型コロナ感染前からすでに表面化していましたが、薄利でも量を追えた時代から、質の時代へと移り、その移行するスピードは新型コロナウイルスによって加速するというのが白木先生の見解です。

質の時代は、患者が自院を知ってから来院、そして自院を出るまで、診療はもとより自院の情報開示、接遇、事務作業の効率化などトータルで考え患者から信頼を得るための質を上げること、そして集患活動や人材不足を補うための積極的にITを活用するなど、総合的に手を打っていくことが経営能力の差として鮮明になっていくと考えられます。

これから診療所を開業する先生はかなりの覚悟を持って開業するはずで、診療所間での競争はこれから激しさを増してくるでしょう。 すでに開業されている先生からすればコロナ後を見据えて今のうちに診療圏内でのアドバンテージを築いておくことがコロナ後の経営安定化への道であると感じたインタビューでした。