発行元:株式会社医療経営
TEL

今月のトピックス
サバイバル時代に突入する医療業界に勝つ

池田 宣康

今月の視点:富裕層が大切にしている「信用残高」から学べる事とは?

新型コロナウイルスが猛威を振るい緊急事態宣言が出されるなか、「富裕層をクライアントにもつ会計事務所の業務と相談事例」と題し、 公認会計士・税理士の坂下尚弥先生にお話を伺ってきました。金融市場が連日乱高下を繰り返しているなか、坂下先生がクライアントである富裕層の方から相談を受けている投資、資産保全についてお聞きすることができました。

 

今回のコロナウイルスによる金融市場の動揺は、リーマンショック以上と言われています。 クライアントからの相談には、自社の上場持ち株を担保に資産運用をしていたが持ち株の下落により追加資金を求められる方もいれば、ここをチャンスとみて新たな投資先を探している方もいるようです。 いずれにせよ資金調達する必要があるわけですが、坂下先生曰く、資金調達時その方がどれほどの信用力を持っているのかが極めて重要なポイントということでした。 これは調達する側にどれだけの返済能力があるかによって金融機関が貸し付け可能かの判断や貸付金額、金利の決定を行うことを表しています。

 

これまで経済環境にそれほど大きな影響を受けなかった病医院においても、今回のコロナウイルスによる患者減少がこれまでにないほど顕著に表れているとの話を耳にするようになりました。特に開業間もなくこれからという先生にとって、いきなり試練の時を迎えているかもしれません。 病医院の事業を継続するには、売り上げ減、利益減によるキャッシュフローの逼迫を回避するにはやはり資金調達が必要であり、先生の信用力が求められます。

 

そして、この信用力は資金調達に限った話ではありません。 私自身が以前富裕層の方から話をうかがう機会があり、そのとき信用はお金よりもずっと大切なものであり、それは「信用残高」によると力説していたことが強く印象に残っています。

 

たとえば患者からみた先生の信用も同じように考えられます。今回のような状況下で患者が減少しているとしても、普段より患者からの信用を得ていれば、いずれ患者は戻ってきてくれるでしょう。またコロナウイルスに感染している可能性のある発熱のある方から診察希望があった場合、感染リスクを考え一切受け入れないのか、それとも先生、スタッフの感染リスクをできるだけ低減しながら患者を受け入れるのか、極めて難しいかじ取りが求められると思いますが、もしその方が他の病医院で診察を断られていたとしたら、自院で受け入れることによってその方から大きな信用を得られることは間違いないでしょう。

 

そのような信用を1つ1つ勝ち得ることで自院の「信用残高」を積み上げていくことになるように思えます。資金調達における信用は、期日に必ず返済することや調達先に事業状況を定期的に報告しておくことですが、人間関係においても、相手の気持ちを考えた言動や行動や相手を喜ばせることで「信用残高」となって積みあがっていくのでしょう。

 

コロナウイルスによる外出制限などいつ解除されるのか、現時点ではまだ収束が見えていません。 そして経済活動もストップした状況です。 おそらくコロナウイルス騒動がきっかけとなり、その後に社会的な不安定さが増してくるなど多くの個人、法人にこれから本格的な困難が降りかかると考えられます。 そんな混迷が深まるなか、苦しい状況が自分の身に降りかかったときこそ自分中心の考えを脇に置き、人のために「信用残高」をできる限り積み上げておくことがこれからの時代にもっとも大切であると思えてなりません。