発行元:株式会社医療経営
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今月のトピックス
サバイバル時代に突入する医療業界に勝つ

池田 宣康

今月の視点:新型コロナで加速する、医療経済の変化

新型コロナウイルスの感染が再拡大し、2021年2月には再び10都府県に非常事態宣言が発令されました。あらたに変異株も急増しており2021年度中はコロナ感染が沈静化しないのではないかという推測もあります。

 

そのような中、新型コロナウイルス感染が病医院に与えている影響について、統計データが出始めています。非常事態宣言が出されるたびに病床逼迫のニュースで取り上げられますが、人口減少、少子高齢化に対応すべく進められてきた医療政策の転換はあるのか、病医院側の医療提供に変化が求められるのかなど気になるところです。

 

そこで「今月のキーマンに訊く」は「新型コロナウイルスで加速する医療経済と医療経営の変化」と題し新型コロナウイルス感染拡大の影響と今後の動きについて、保健医療経営大学教授 白木秀典先生に取り纏めていただいた資料をもとにお話を伺いました。

 

資料にある厚労省のデータをみていくと、新型コロナウイルス感染拡大の影響により対前年比の入院医療費が軒並みマイナスとなっていることは容易に理解できますが、とくに200床以上の病院ほどマイナスが大きくなっています。 また診療所については支払基金のデータから対前年比で月間患者件数は減少している一方で、一日当たりの点数は伸びています。 これは早急な治療、必要な治療を必要とする患者は来院しているが不要不急の患者数が減少していることを示唆しているように思えます。

 

コロナ前のデータである平成29年度の中医協資料によると、10万人当たりの外来受療率はすでに減少を続けており、また診療所は20年の間、単価の伸びは低いままです。そこに新型コロナによる受診抑制が加わることで大きく減少した受療率はもとの数値には戻らないと考え、今後の対策を考える必要がありそうです。例えば、訪問看護だけはコロナに関係なく顕著に伸びており在宅診療は需要が増していることから参入することも検討材料になると思います。

 

少子高齢化、人口減少が顕著で1990年までのような経済発展が見込めない時代となり、団塊世代がすべて75歳以上となる2025年を1つの目標地点としこれまでさまざまな観点から国の政策が進められてきましたが、新型コロナによって国の財政支出が急速に膨らみ大幅税収減は避けられません。また、患者の受診行動の変化、オンライン診療の浸透などこれを機に加速しています。

一般病院、診療所、在宅医療について今後どのような事が進んでいくのか、白木先生に取り纏めていただいた資料の中で次の通り述べています。

 

  • 一般病院

1)急性期病院の高度急性期群と亜急性期群の機能分化が急速に進む

2)ICT、AIへの投資可能ランクで選別が進む

3)系列化が進み、社会医療法人も増加する

4)医療技術者の不足感が和らぎ働き方改革が進む

 

  • 診療所

1)「かかりつけ医」の普及が進む

2)診療報酬体系全体も定額制が多くなる

3)都心のコンビニ的利用が減り、医師以外を活用した

セルフメディケーションが普及する

 

  • 在宅医療

1)地方では中小病院の割合が増加し、都心部では小規模と大規模に二極化する

2)自宅での看取りの割合が急増する

3)医師による在宅医療の割合は減少する

 

これらは新型コロナ以前より進められてきた政策ですが、緩やかに進んできた変化の速度は今後加速していくだろうというのが白木先生の見解です。

大きな動きのなかで自院がコロナ後の急速な変化を見据え、地域に最適な医療提供ができる準備をすすめた病医院ほど更なる発展が期待できると感じたインタビューでした。