発行元:株式会社医療経営
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今月のトピックス
サバイバル時代に突入する医療業界に勝つ

池田 宣康

今月の視点 : クリニックの院長がコンサルタントを活用する場面

「今月の視点」7月号『進む「医業と経営の分離」と対応について』のなかで、病院の経営を外部コンサルタントに依頼する選択肢について述べましたが、果たしてクリニックの経営にもコンサルタントを活用する場面はあるのでしょうか。

病院の主な収益源は入院医療であり、ドクター、看護師、コメディカルスタッフを含めた組織運営という側面があるため、病棟転換など大きな動きがあると組織再編にも時間がかかり、万一失敗すれば収益に大きな影響が出るどころか最悪は倒産の憂き目にあいます。そのためコンサルタントを迎え入れ、専門的なアドバイスのもと経営課題の解決を図る必要性があることは理解できます。

一方、クリニックの主な収益源は外来診療であり、ドクターが果たす役割の比重は病院よりさらに高くなります。そのため極論を言えば、院内での様々な問題や課題があるとしても近隣に脅威となる競合医院もなく来院患者数が安定的に確保できていれば収益も安定し経営は成り立ちます。従ってわざわざコンサルタントを活用する場面はそう多くはないのでは、と考えていました。

ところが、今月号CDインタビューでクリニック専門のコンサルタントであるドクター総合支援センターの近藤氏に伺ったところ、これまで200件以上のクリニックから相談を受けてきたとのことで、意外にもクリニックからの経営相談が多いことを実感しました。 そのインタビューの中で一番印象に残っていることは、クリニックの場合、ドクターとして優秀でも経営者として必要な教育や経験がないことが原因となっての相談が多いとの事でした。

確かに、医療機関に対する患者からの厳しい目、多様化する職員への対応、競合医院の増加による減収など、クリニック経営にあたり重要かつ対応すべきことは増えるばかりです。 それにもかかわらず、これらのことに目をつぶって診療ばかりに先生の関心が集中してしまうと、細かな不満の積み重ねによるスタッフとの軋轢や患者減少への対応遅れが減収を招き、さらに決算書の理解不足によるキャッシュフローの欠乏など様々な問題が噴出してくるのでしょう。

クリニックの場合、院長一人がすべての経営課題を抱え解決していかなければなりません。従って経営全般を俯瞰し全体最適化を図り院外経営幹部としての役割を果たすコンサルタントを活用するのはクリニック経営を安定化させる1つの解決策だと考えます。

その際に重要なポイントは、時には厳しい意見を忌憚なく院長に言えるコンサルタントを選ぶことだと考えます。年齢が上がるとともに、身近で自分を律してくれる人はいなくなりますが、特にクリニックのトップである院長に対して、いかに正論であっても厳しいことを言える人はそういません。その状況で、気づかないうちに裸の王様とならないよう軌道修正してくれるアドバイザーにご自身の傍らにいてもらうことが、ドクターという枠を超え、経営者としての成長にも繋がるのではないでしょうか。