発行元:株式会社医療経営
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今月のトピックス
サバイバル時代に突入する医療業界に勝つ

池田 宣康

今月の視点:”具合が悪いから受診”は過去のものになる!?

医療機関には、疾患を抱えた人や身体の変調を訴える人が治療を希望し“患者”として来院します。医療機関であるから当たり前の話ですが、今回のインタビューを通じて、来院に至る動機が今後変化していくのではないかと考えさせられました。

 

医療技術は目覚ましく進歩していますが、それでも病気を根絶する時代になるにはまだ時間がかかります。 現時点では、年を重ねるごとに何かしらの不調や疾患を抱える人が多くなるのが現実です。 しかし、自助努力により病気を予防したい、病気になったとしても重篤化しないよう定期的に医療機関で受診したいと考える潜在来院者が多くいることを知る良い機会となりました。

 

今回のインタビューで伺ったのは、超音波検査の受託業務という新しいビジネスモデルです。 医療機関に赴き、医師の指示のもと、超音波検査を実施します。腹部や乳腺だけでなく、頸動脈、甲状腺、心臓など検査できる部位は多岐にわたります。 来院者に対し医師より説明を行い、経過観察の場合は定期的な再来院を促します。 これは、歯科医院で行っているPMTCと類似したシステムになっています。

 

PMTCとは、プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニングの略で、いわゆる歯の定期クリーニングです。 歯科医院では、このPMTCでの定期来院を促し、クリーニング時に虫歯や歯の不具合があれば、治療します。 こういったプロセスは、歯科医院にとって定期来院という経営上のメリットがある一方で、来院者側の「デンタルIQの向上」にも大きく寄与することとなります。虫歯や歯周病といった歯の疾患を予防し、歯の健康を維持するためには個々人が予防への高い意識を持つことが重要ですが、定期的なPMTCをきっかけとしてそれが実現しています。

 

実際に、文部科学省の学校保健統計調査によると、1990年時点での12歳児の一人あたり平均むし歯数が4.30本であったのが、2017年では0.82本へと大きく減少しているのは、PMTCとそれによるデンタルIQの向上が大きく貢献していると考えられます。

 

同様に医療機関での超音波検査を入口に、来院者の健康に対する意識を高める、もしくは意識の高い来院者のニーズにこたえることができ、早期発見、早期治療につながります。国としては医療費削減が見込め、そして医療機関は、定期来院による収益増加に繋がってくるのです。

 

今後は、「病気を治療する」から「病気を防ぐ」時代へと移りAIやビックデータを活用した予防医学が伸びてきます。 それに伴い医療機関の診療形態も変化し、それに合わせた新しいサービスやシステムが次々と生まれてくると考えられます。 そういった潮流の変化を見逃さず、自院の経営のかじ取りにどう生かしていくか、時には従来とは違った観点から収益向上の方策を考える事も必要なのかもしれません。